【日本配信決定記念】ウェルテルの恋ってどんな恋？
韓流ぴあ様、次はどんな大作ぶっこんできてくださるのかしら？って期待していたら、第三弾はなんとウェルテル！いや～、いい意味で裏切られました。韓流ぴあ様、ありがとうございます！！（毎回）
～韓流ぴあPresents Kミュージカルシネマ～ミュージカル「ウェルテルの恋」オンライン配信
配信って相当費用かかるっていうし、権利関係も難しそうだし、諸々乗り越えるのはEMKくらいかなって思っていたのですが、CJもついに！
韓国には多くのミュージカル制作会社があるのですが、CJ E&Mはキンキーブーツやビッグフィッシュ、ボディガードなどのライセンス作品や、西便制、Maybe Happy Endingなどのオリジナルの良作を上演している大手制作会社の一つ。
今回配信されるのは、CJ E&Mが今年8月～11月にソウルで上演していた、ウェルテルの20周年記念公演です。
この作品、実は2013年に東京で来日公演やっているんですよね。しかも私の本陣様主演。まだ当時のサイトが生きているんですけど、今見ると内容が非常に微妙・・・韓流＝イケメン＆ラブ♡的な宣伝の仕方で、本陣様なんて「ミュージカル界のカンドンウォン」。いや、大好きですけどね、カンドンウォン様。そこじゃないだろって。当時の雰囲気に興味があるかたは覗いてみてください。
http://t.pia.jp/feature/hanryu_stage/index.html
改めまして、ウェルテルはこれまで配信されたEMK作品とは趣きが180度異なる、韓国ミュージカルの新しい一面がよくわかっていただける素敵な作品なんです。
今回は、ミュージカル作品としてのウェルテルをフラットにご紹介したいと思います。
作品紹介
『ウェルテル』は、18世紀のドイツの文豪、ゲーテが自身の体験をもとに創作した代表作「若きウェルテルの悩み」を原作とした韓国オリジナルミュージカルです。有名な小説ですし、宝塚でも『春雷』が同じ原作なので、話自体には馴染みがある方も多いと思います。
2000年の初演から20年間定期的に上演されてきた、韓国で大変人気がある作品です。キャストも初演のソ・ヨンジュからチョ・スンウ、オム・ギジュン、キム・ダヒョン、ミン・ヨンギなど、錚々たる俳優ばかり。
これまで日本で配信された韓国ミュージカルは２作品とも、豪華な舞台装置に派手な演出、歌声の圧力これでもか！っていう、どちらかというと力でねじ伏せるタイプだったのに対し、ウェルテルは抒情的な旋律に乗せて、主演キャストの繊細な感情表現に沿って物語が進んでいく、ストーリー性に重点が置かれた作品。
韓国ミュージカル＝派手というイメージから入ると、良くも悪くも裏切られると思います。
そう、この作品、キャストの表現や演技力で方向性が全く変わるんですよ！
話そのものは、思い込みの強いオタクことウェルテルの独りよがりな恋物語（※あくまで個人的感想です）ですが、一途にロッテを想う清らかな心、それを打ち明けられない繊細さ、誰も傷つけたくない優しさ等々、ウェルテルの複雑な内面をどう表現し、観客に伝えるかという点に、作品の出来がかかってきます。
もちろんそれは、ヒロインであるロッテも、ライバル役のアルベルトも同じ。
どんなに歌が上手くても、そこに演技力がないと伝わらない。実力あるキャストが演じてきたからこそ、韓国でこれだけ長く愛される作品になっているのだと思います。
短いオフィシャル映像からも伝わる、詩的な世界観。
🌻 #뮤지컬베르테르 🌻 20th ANNIVERSARY, 여전히 당신을 바랍니다ㅣOfficial Trailer
あらすじ
美しい街に赴任してきたウェルテル。
街中で人形劇をやっていた天真爛漫なロッテに一目惚れし、彼女の自画像を描いてプレゼントする。
詩的な価値観を共有できるウェルテルにロッテも共感を示し、打ち解けた二人。ロッテは絵のお礼にとウェルテルに本とリボンを渡す。それを彼女からの好意と受け取ったウェルテルだったが、ロッテにはすでに婚約者アルベルトがいた。
赴任先から戻ってきた裁判官のアルベルト。ロッテから友人としてウェルテルを紹介され、彼もまたウェルテルに友情を示す。
絶望して街を去り、旅に出るウェルテル。だが、どうしてもロッテのことが忘れられず、再びロッテがいる街へ。
アルベルトと結婚したロッテ。久しぶりに会うウェルテルを歓迎するロッテに、ついに想いを告げるウェルテル。戸惑うロッテと、それに気づいたアルベルト。
ロッテに受け入れられず、深く傷ついたウェルテルは・・・
5月の煌めく陽光と美しい緑、咲き誇る花々の中で、劇的に恋に落ちたウェルテル。
ひまわりが物語のモチーフとして使われていて、舞台上にはひまわり畑が。美しい景色と抒情的な音楽が、悲しい恋物語を一層引き立てます。
登場人物＆キャスト
ウェルテル（ＫＡＩ／キュヒョン）
主人公。原作では法律家、オペラでは詩人ですが、ミュージカル上の設定は不明。（舞台上で説明されてましたっけ？私が知らないだけかもしれないです。すみません。）
とにかく、別の土地から舞台となる美しい街に移ってきたウェルテル氏。
冒頭から絵を描いていて、繊細で芸術的な感覚を持った青年なのだなという印象。
一方的にロッテに恋に落ち、一方的にロッテも自分のことが好きだと勘違いし、一方的に傷つき、最後は一方的に・・・
ね？怖くないですか？完全にストーカー体質。思い込み激しすぎやで・・・。
ウェルテルの繊細さが狂気としか思えない私からすると、先にストーリーだけ知ってたら絶対観に行かなかったと思います。
それが一転、みんなが咽び泣く美しい抒情詩に変換されるというのだから、こりゃ観るしかないってなりますよね。
今回配信されるウェルテル役は、KAIさんとキュヒョンさん。
KAIさんは前回配信のエクスカリバーを見た方はよくお分かりでしょう。声楽出身、伸びやかなビブラートが特徴の、韓国ミュージカル界きっての美声の絶対王者。
誠実でストイックな人柄が役柄にもよく表れることで（私の中で）有名な彼が、繊細なウェルテル青年をどう演じているのか、あまり想像がつかないし、そこが楽しみでもあります。
一方のキュヒョンさんは、私が説明する必要もないと思います。アイドルグループ、スーパージュニアのメインボーカルとして活躍。ミュージカルでもモーツァルト！や笑う男などの大作で主役を務め、俳優としてのキャリアも着々と積み上げてこられています。私は舞台での彼は未見なんですが、15周年に続いてのウェルテル再登板なので、その演技が評価されてのことだと思います。確かに、美しいウェルテルの曲調に彼の声質、絶対合うと思う。
ウェルテルを代表するナンバー”발길을 뗄 수 없으면”（足を踏み出せないのなら）
KAIさんver.
베르테르 눈물에 내 마음에 그림자가 지는데😭🌻 카이 '발길을 뗄 수 없으면'｜#뮤지컬베르테르 Werther 2020
キュヒョンさんver.
규베르의 마음을 누르는 일😭🌻 규현 '발길을 뗄 수 없으면'｜#뮤지컬베르테르 Werther 2020
シャルロッテ（キム・イェウォン／イ・ジヘ）
ウェルテルの想い人。天真爛漫で聡明な女性。詩を愛し、文学に造詣が深いウェルテルに友情を示す。
某企業の名前の由来になっていることでも有名。文学界に誇る理想の清純な女性像って感じなんでしょうか。いつもお世話になっているソウルの劇場も彼女の名を冠しています。私には、純真なウェルテルを弄ぶ悪い女にも思えるんですが...
ウェルテルが一途に思い続けるほどの魅力を持った役っていうのも、なかなかのハードルだと思います。個人的にはウェルテルよりも、ロッテのその後の人生が気になります。幸せになれたのかな。不憫。
キム・イェウォンさんは、ミュージカルだけでなく演劇やドラマ、映画などでも幅広く活躍されている俳優さんです。明るく伸びやかな歌声に高い演技力で、ロッテ役にはぴったりだと思います。
ウェルテルが恋に落ちるロッテの登場シーン”자석산의 전설”（磁石山の伝説）
磁石山を目指す王子の冒険を人形劇で演じています。
예원롯데가 나를 부른다 ⌯'▾'⌯ 🌻 김예원 '자석산의 전설'｜#뮤지컬베르테르 Werther 2020
一方、イ・ジヘさんはキュヒョンさんと同じく15周年記念公演に続く再登板。
これまでジキル＆ハイドのエマやドラキュラのルーシー、フランケンシュタインのジュリア、ファントムのクリスティーヌなどで拝見してきた、信じて観られる俳優さん。私が観た公演がジヘロッテだったこともあり、私の中でのロッテはジヘさんです。
ウェルテルにリボンをプレゼントするシーンで歌う”우리는”（私たちは）
別名、「(片思いの底無し沼という)地獄に堕ちろ」笑
잠깐 사이 우리는..🌻💛 나현우 이지혜 '우리는'｜#뮤지컬베르테르 Werther 2020
アルベルト（イ・サンヒョン／パク・ウンソク）
ロッテの婚約者。裁判官。仕事に厳しいがロッテには甘い。遠い赴任地から帰郷し、ロッテと結婚する。ロッテに紹介されたウェルテルに友情を示すが、彼が抱くロッテへの恋心に気づき・・・
原作ではウェルテルの親友として描かれてますが、ミュージカルではそこまでの友情関係はありません。むしろ、ウェルテルに対しては厳しく接していたイメージ。
そりゃ久しぶりに会った愛しい婚約者にストーカーいたらそうなるよね、って感じではあります。
キャストお二人とも歌の安定感は抜群。低音でよく響く声にアルベルトの包容力がよく表れています。
イ・サンヒョンさんの"언젠가 그날"(いつかその日が) ロッテとの再会シーンで歌われる曲です。画面端でガーン！ってなってるウェルテルにも注目。
세상 스윗한 알베르트가 보이는가🥰 이상현 '언젠가 그날'｜#뮤지컬베르테르 Werther 2020
パク・ウンソクさんの”달빛 산책”（月光散歩）ロッテとのデートシーンです。これまた後ろでショックを受けてる哀れなウェルテルにも注目ください。
소녀처럼, 소년처럼 사랑스러운🌝💛 이지혜 박은석 '달빛 산책'｜#뮤지컬베르테르 Werther 2020
オルカ（キム・ヒョンスク）
街の人が集まる居酒屋の女将。ウェルテルの良き相談役。
カインズ（イム・ジュンヒョク／ソン・ユテク）
街で働く若い庭師。勤め先のお屋敷の奥様への身分違いの恋心に悩んでいる。
同じような境遇の彼をウェルテルも気をかけているが、ある日彼がとった思いがけない行動が、その後のウェルテルにも大きく影響することになる。
イム・ジュンヒョクさんの”사랑을 전해요”（愛を伝えよう）
베르테르에 대한 사랑은 자신도 모르게 🥰🌻 카이 임준혁 '사랑을 전해요'｜#뮤지컬베르테르 Werther 2020
ソン・ユテクさんの”정원의 입맞춤”（庭園の口づけ）
날 부르는 유택카인즈의 소리🌻 송유택 '정원의 입맞춤'｜#뮤지컬베르테르 Werther 2020
キャストスケジュール＆配信スケジュール
今回は２パターンの配信あり。もちろん、都合がつく方には両方とも見ることをお勧めします！主演キャストで印象が全く異なる作品だし、両方見ることで気づく違いもあると思います。
都合がつかない方や、とりあえず１回だけ見てみたいという方は、上記で紹介した主演キャストの歌声で直感的に選んでみてください。
毎回素晴らしい企画をしてくださる韓流ぴあ様、本当にありがとうございます！！
第４弾もものすごく期待していますので、引き続きよろしくお願いします！！！
パク・ガンヒョン ソロコンサート"MElody in blue"配信視聴方法
2019年11月に開催されたパク・ガンヒョンさんの初ソロコンサート”MElody in blue"がNAVER TVで有料配信されます！
↓ニュースリンク
【公演詳細】
配信日時：2020年11月15日（日）午後6時
チケットオープン：10月27日午後2時〜11月15日午後7時まで（配信終了後1時間まで購入可能）
チケット価格：25,000ウォン（約2,500円）
※１つのIDごとに２つの端末まで視聴可能
※配信終了当日の23時まで視聴可能
「笑う男」や「モーツァルト！」等で日本でも一躍有名になったガンヒョンさんの初ソロコンを、日本でも見られる絶好のチャンス！日本のミュージカルファンの方にもぜひ見ていただきたい！
ちょっと手間がかかりますが、日本からでも視聴できます！
以下、できるだけわかりやすく視聴方法を解説させていただきます。
※説明に添付している画像はスマホの画面イメージです。PCでも同じ手順なので参考にしてください。
※各サイトへの登録や決済は自己責任でお願いいたします。
1.事前準備
必要な事前準備は３つ。①韓国NAVERサイトへの会員登録、②NAVERサイトでの本人認証、②PayPalへのユーザー登録です。
①NAVER会員登録
上記リンクからNAVERの会員登録を行います。詳しい手順は下記画像を参照ください。
入力は全て半角英数字で行います。
②の本人認証で使用するパスポート等と同じ氏名・生年月日で登録してください。
個別に同意することもできます。
携帯に届いたコードを入力後、「Sign Up」をクリック。
②NAVERサイトでの本人認証
次に、本人認証です。①で登録した名前・生年月日が正しいことをパスポート写真等で証明します。これを実施しないと、決済ができません。
上記リンク先で必要事項を入力していきます。
氏名（ローマ字表記が望ましい）と生年月日（西暦表記が望ましい）が証明できる画像を添付するので、用意しておいてください。パスポートがベストだと思います。
入力は下記画像参照。わかりやすいように日本語訳の画像をつけています。
漏れなく入力して「参加する（Submit）」を押すと、受付完了の画面が表示されます。
そこから大体１時間前後（土日もOK）で、上記で入力したメールアドレスに、認証完了のメールが届きます。
これで本人認証は完了です。
万が一認証されなかった場合は、メールの内容に従って再申請してみてください。
③PayPalユーザー登録
今回は有料配信ですが、外国人の決済方法はPayPalのみです。
PayPalアカウントをお持ちでない方は、サイトからユーザー登録してください。
PayPal(ペイパル) - かんたん＆安全なオンライン決済サービス
ちなみにPayPalとは、手持ちのクレジットカードや銀行口座と登録することで使用できる、オンライン決済手段です。登録は無料。普通にクレジットカード決済をするような感覚で使用できます。
国境を越えたオタク活動をしていると、グッズ購入やファンクラブの集金等で使用頻度が高いので、今後も越境活動を予定している方は登録しておいて損はありません。
以上で事前準備は完了です。
2.チケット購入
さて、ようやくチケット購入です。ここまでくれば後は簡単。
正確に言うと今回はチケットを買うわけではなく、サイトを「後援する」という形です。25,000ウォン以上の後援をした人が、報酬として動画配信を見られるという形式になっています。動画を見られることには変わりないのであまり気にしなくてOK。
上記リンク先に移動し、決済します。詳しい手順は下記画像のとおりです。
「곌제하기（決済する）」ボタンを押すとPayPalサイトに遷移するので、ログインして決済してください。
もし途中で「NAVER FINANCIAL」という画面が出てきたら、同意チェックの上画面遷移してください。
これでチケット購入完了です。無事に購入できたら、登録しているメールアドレスに確認メールが届いているはずです。
3.視聴方法
配信はこちらのサイトからログイン後に視聴できます。
1つのIDで2つの端末まで視聴することができるようです。当日の23時まで視聴可能とのことなので、開始に遅れても大丈夫です。
11月15日（日）18時スタート、お忘れなく！
そして、その前には「エクスカリバー」もどうぞ！！
11月14日（土）・15日（日）の両日とも12：30～と17：00～の計4回配信。コンサートと最終配信回が被っちゃうので、それ以外の回をぜひ。すべて同じ内容です。
toto8796.hatenablog.com
4.おまけ（セットリストなど）
ネタバレせずに配信を見たい方は飛ばしてください！
コンサートのセットリストです。
編集が入る可能性はありますが、ご参考までに。
- オープニング～산골 소년의 사랑 이야기（山の少年の恋物語）：예민（イェミン）
- 추억이면（思い出ならば）：부활（復活）
- キム・グァンソクメドレー
두 바퀴로가는 자동차, 그녀가 처음 울던 날, 너무 아픈 사랑은 사 랑이 아니 었음을, 잊어야한다는 마음으로, 사랑했지만 - 꽃이 피고 지듯이 （花が散って咲くように）：映画「使徒」OST
- City of Stars：映画「ラ・ラ・ランド」OST
- The Scientist：coldplay
- 2002：Anne Marie
- Role of a Lifetime：ベア・ザ・ミュージカル
- 僕こそ音楽：モーツァルト！
- 世界を変える：笑う男
- 叶わぬ愛：エクスカリバー
- Step One：キンキーブーツ
- 私だけに：エリザベート
- ダンスメドレー
Beautiful(Wanna One)、Love Shot(EXO)、벌써12시(청하)、IDOL(BTS) - キッチュ：エリザベート
- エンディング～연예인(ENTERTAINER)：PSY
- アンコール1～ Shallow：映画「アリー/スター誕生」OST
- アンコール2～君の夢の中で：フランケンシュタイン
Kpopから洋楽、ミュージカルナンバー、さらにはKpopダンスメドレーまで！
最初から最後までゲスト無し、充実のソロコンサートです。
最後に、臨場感を高めるために当日の会場の様子をご査収ください。
（提供：妹）
【日本配信決定記念】エクスカリバーのここがすごい
韓流ぴあ様プレゼンツ、韓国ミュージカル日本配信第二弾！やっぱりきました、エクスカリバー！！通称エッカル。
韓流ぴあ様、emk様、心からありがとうございます（リプライズ）
前回配信されたモーツァルト！と違って、今回はワンキャストのみ。
韓国では知らない人はいない有名キャストばかりだけど、アイドル俳優もいないし、一般的な知名度低いのでは…？と勝手に心配し始めた私。
今回も勝手にPRさせていただきます！
あらすじ
６世紀の古代英国。
暗黒の時代。英国の王、ウーサー・ペンドラゴンが死亡した後、サクソン族は王を失った英国を植民地にするために、手あたり次第に英国人を殺す残虐な戦争を起こす。
ドルイド教の魔法使いであり預言者であるマーリンは、混沌の時代に終止符を打つことができる新しい王、アーサーを王座に就かせるために長年の計画を実行に移す。自分が王族であることを知らずに平凡に成長したアーサー。
魔法使いマーリンから自分の運命を知らされた彼は石に刺さっていた聖剣エクスカリバーを引き抜いて、英国の新しい王として崇められる。最も信頼できる親友であり、優れた実力を持っている騎士ランスロットと一緒にキャメロット城を築き、サクソン族と戦う偉大な旅程を始めたアーサーは、勇敢で聡明な女性グィネヴィアと出会い恋に落ちる。
一方、理由も知らないまま20年間修道院に閉じ込められて成長したアーサーの腹違いの姉モルガナは、サクソン族の侵略で混乱している隙に修道院を脱出。自分が失った全てを取り戻すために、師匠のマーリンを探しに行くが…（interpark HPより）
オタクの必修科目、イギリスのアーサー王物語を基にしたお話なので、ストーリを知っている方も多いのではないでしょうか。
ミュージカルエクスカリバーは、青年アーサーが王として立ち、国を治めるまでの成長物語といった感じです。ちなみにオタクが大好きな円卓の騎士達もアンサンブルとして登場します。（役名は付いてませんが）
emk様はオリジナルミュージカルと謳ってますが、2014年にスイス、オーストリア、ドイツで上演された"Artus-Excalibur"が土台となっています。emkが上演権を買い取った後、大幅に改変を加えたそうなので、オリジナルと言ってもいいのかもしれません。
作曲はみんな大好きフランク・ワイルドホーン様。ワイルドホーン兄貴ならではのロックテイストに独特のケルト音楽が加わり、荘厳かつ雄大な世界観を盛り上げています。
オフィシャルティーザー
2019 뮤지컬 엑스칼리버 캐스트 영상 공개 ⚔
キャスト紹介
主要キャストの経歴については、トップで紹介した韓流ぴあ様のHPが詳しいので、そちらを参照ください。
アーサー（KAI)
英国王ウーサー・ペンドラゴンの実の息子だが、生まれてすぐ魔術師マーリンによって木こりのエクターに預けられる。18歳になった時、マーリンに出自を知らされ、聖剣エクスカリバーを抜き、王として生きることを決意。仲間たちを率いてサクソン族との戦いに挑む。
ペンドラゴンの家系は「怒りの竜」を血に宿しており、気性が荒く喧嘩早い。っていう設定なんですけど、カイさんにはまったくやんちゃさを感じません。むしろ、王族の気品を隠し切れない、ノーブルなアーサー。プライドは高そう。
カイさん本人のストイックさが現れたような、確固たる信念がある青年。エクスカリバーは、一人の青年が王になるまでの人間ドラマとしての側面が強いのですが、カイアーサーは青年としてというよりも、王としての道に悩んでいるような印象を受けます。
声楽ベースの強く美しい歌声は、王者の風格。まさに荘厳の響きです。
ちなみに「アーサー」は韓国語での発音は「アド」。慣れるまでちょっと違和感あるかもしれません笑
ワイルドホーン氏の伴奏で歌う「王になるということ」
[풀버전] 강렬한 카리스마! 카이의 뮤지컬 〈엑스칼리버〉 중 ′왕이 된다는 것′♪ Full ver. 차이나는 클라스(jtbclecture) 115회
ランスロット（パク・ガンヒョン）
アーサーの幼馴染で親友。剣術に優れていて、眉目秀麗な色男。
王となったアーサーの右腕としてサクソン族との戦いの最前線に立つ。密かにグィネヴィアに思いを寄せている。
モーツァルト！配信で日本でも一躍有名になったガンヒョンさん、髭を蓄えた色男役で登板。設定上はアーサーより年上で「兄貴」と慕われる役なのですが、実際はアーサー役のKAIさんのほうが8歳年上です。
ガンスロットの見どころは、もちろんその歌声。KAIさんと同系統の声質なので、混じりあう声の響きの美しいこと。あともう一つは剣術。子供時代に剣道を習っていたというガンヒョンさんの剣をふるう姿、しなやかでとっても美しいんです。
舞台上で使っている剣は金属製で重量感ある感じなんですが、殺陣では実際に剣をぶつけていて、その迫力が凄い。私が観たときは摩擦で火花まで散ってました。
観てるほうは臨場感でうわあ！ってなるんですが、頬に傷があった時期もあったので、怪我と紙一重だったんだろうなと思います。大事なく終わって何よりでした。
カイアーサーと剣を交えながら歌う”Go by Yourself”。二人のハーモニー（？）と剣裁きをお楽しみください。
뮤지컬 '엑스칼리버(Xcalibur)' 2019 프레스콜 '혼자서 가' - 카이, 박강현 외 Musical 'Xcalibur' - 'Go by Yourself'
モルガナ（シン・ヨンスク）
アーサーの異母姉。20年間修道院で幽閉されていた。マーリンは魔術の師匠。
サクソン族に拉致されかつて過ごした城に戻った際、自分を幽閉していたのが父であり、アーサーを王にするためであったことを知る。死んだと思っていたアーサーが生きていることを知り、復讐を誓う。
こちらもモーツァルト！配信で肝っ玉男爵夫人として話題になっていたヨンスクさん。
個人的な感想としては、この作品の主役はモルガナです。圧倒的に邪悪な存在感と歌声で、完全に持っていかれます。
どでかい世宗文化会館の大ホール中に響き渡る圧巻の歌声。アーサーへの恨みと復讐を誓う"Sins of The Father”は毎回ショーストップ状態でした。
ヨンスクさん、エリザやM!もいいけど、やっぱり悪役がダントツ似合う！！
ヨンスクモルガナの”Sins of The Father”。優勝。
뮤지컬 '엑스칼리버' 2019 프레스콜 '아비의 죄' - 신영숙 Musical 'Xcalibur' - 'Father's Sin'
マーリン（キム・ジュンヒョン）
年齢不詳のドルイド教の魔術師。生まれたばかりのアーサーをエクターに預けた後、姿をくらましていたが、18歳になったアーサーの前の突如現れ、運命を受け入れろと諭す。英国に平穏を取り戻すため、アーサーを王として導く。
劇団四季出身なので、日本でもご存じの方が多いかもしれません。2010年からは韓国に拠点を移して活動されています。
セクシーな歌声と漂うオーラ。むせ返るような大人の色気。2018年夏、私の双眼鏡はジュニョンマーリンに釘付けでした。モルガナと絡むときの妖しい雰囲気、最高of最高です。
色気爆発ナンバー”Desire"。
뮤지컬 '엑스칼리버(Xcalibur)' 2019 프레스콜 '욕망' - 김준현, 장은아
グィネヴィア（キム・ソヒャン）
聖剣を抜いた青年の噂を聞き、アーサーの住む村を訪れ、アーサーと恋に落ちる。結婚後、王として生きるアーサーを支えようとするが、次第に離れていくアーサーの心に苦悩する。
これまたモーツァルト！でコンスタンツェを演じていたキム・ソヒャンさん。彼女のグィネヴィアは、アーサーを優しく包み込む太陽のような存在です。悩むアーサーの尻を叩きつつ、正しい方向に導こうとする、まさに姉さん女房。
個人的にはKAIさんとソヒャンさんの組み合わせが役柄的に一番しっくりくるなと感じてたので、今回配信で観られてうれしい限りです。
二人が出会うシーンの”If He Was Here"。アーサーがエクスカリバーを抜いた本人だと知らず、どんな人なのかしらと歌うグィネヴィア。二人とも初々しくてかわいい。
뮤지컬 '엑스칼리버(Xcalibur)' 2019 프레스콜 '그가 지금 여기 있다면' - 카이, 김소향 외 Musical 'Xcalibur' - 'If He Was Here'
一押しポイント
わかりやすいストーリー
日本でも上演されている作品なら取っかかりやすいけど、初見だし、楽しめるか心配...と思っている方。大丈夫です。
ストーリー展開がわかりやすく、視覚的情報も多いので、純粋にエンタメ作品として楽しめます。ファンタジー好きには特におススメ。
曲のすばらしさ×歌唱力
ワイルドホーン楽曲って、耳障りいいけど、実はかなりの難曲揃いですよね。それを軽々と歌い上げる実力者たち。ミュージカルっていうからには、やっぱり歌が上手いのは大前提。技術無くして芸術なし（byハン・チサン先輩）。
ワイルドホーン節を心ゆくまで堪能できる絶好のチャンスです！
豪華な舞台装置
韓国最大規模の舞台を最大限に活かした、高さと奥行きのある舞台装置。
通常私たちが見慣れている舞台の1.5倍くらいはあると思います。
確かオケピ前方にもせり出し舞台みたいなの作ってて、そこで殺陣とかやってました。
舞台上に現れるせり立つ崖や泉、プロジェクションマッピングを使ったド派手な演出、まるで映画を観てるような感じです。
世宗２階席からの眺め。壮大。
出演者の多さ
韓国ミュージカル史上、最大規模と言われた出演者。アンサンブルは総勢66名（キャストボード数え）。プロの役者だけでなく、学生も参加してます。
舞台に現れるサクソン族の軍団、地鳴りが聞こえてくるほどの迫力です。
アンサンブルも全員写真と名前を掲載する韓ミュのキャスボ文化、好きです。
今回は１キャストのみの配信なのでほかのキャストと見比べられないのは残念ですが、ミュージカル好きなら絶対に見て損はない作品です。
ぜひ素晴らしきエッカルの世界を一緒に楽しみましょう！！！
おまけ。会場ロビーの様子。
モーツァルト！と私
まさか、「モーツァルト！と私」が書ける日がくるなんて。
３キャスト配信、本当にありがとうございました。もちろん６公演購入して自宅マチソワしました。（残念ながら最終日は同時配信だったのでウンテ様を選択しましたが）
今まで韓国ミュを観たことがなかった人も、興味はあっても韓国まで行けなかった人も、特定キャストしか観たことなかった人も、たくさんの人が３人の公演を観て心を動かされている様をSNSで拝見し、withコロナ時代も悪いことばっかりじゃないなと感慨に浸っておりました。
本国の千秋楽に合わせてジュンス回の再配信も決まったようで、この盛り上がりが今後に繋がって、もっとたくさんの作品が観られるといいなと願ってます。
さて、久しぶりに満足のいくインプットができたので、冷めないうちにアウトプットを。
キャスト別感想、いきます！
パク・ガンヒョン（ガンチャルト）
～優等生、盗んだバイクで走り出す～
「モーツァルト！」のヴォルフガングって、若さと勢いで演じることに価値がある役柄だと思うんです。もちろん、技術があっての話ですが、粗削りなところに魅力が出る、数少ない役柄。
ガンチャルトは、まさに若さと勢いの煌めきが感じられるヴォルフガング。
若さゆえの傲慢さと爆発寸前のエネルギーを、きれいな光に変えて舞台で発散している、そんな印象を受けました。
幼いころから天才ともてはやされながら、本人にその自覚はなく、何も考えてなさそう。特にやりたいこともなく、親に言われるままに従い、それを嫌がるそぶりもない。家族を支えている自覚もなく、ただ毎日が楽しければそれでいい、そんなフワフワした雰囲気。純粋で危うさすら感じる「♪僕こそ音楽」、心が洗われるようでした。
そんなガンチャルトが、母の死を機に少しずつ自我に目覚めていく姿は、天才ではない、一人の苦悩する若者。このままの自分でいいのか、自分の存在意義は何なのか。男爵夫人が語る物語を聞いて、新しい世界への希望に目を輝かせるガンチャルト。「♪影を逃れて」からは、才能（＝アマデ）に振り回されて生きるのはもううんざりだ、自分の決めた道を歩くんだという強い決意を感じました。
過保護な親と喧嘩して、無一文で実家を飛び出す、世間知らずの若者そのもの。
2幕からは自分の才能を操り、成功を収めていくガンチャルト。自分の力で生きていけるという自信に溢れ、輝きに満ちているのに、ふとしたときに感じる影。
光に当たればあたるほどその影は強くなって、次第に影をコントロールできなくなり、影に支配されてしまう。
苦しみの中で、自分には父の支えが必要だったと気づいたけど、時すでに遅し。父にも見放され、破滅への道を進んでいく。若さと傲慢さが招いた破滅だなと思いました。
天才としてではない、一人の若者としてのモーツァルトを生きたガンヒョンさん。盗んだバイクで走り出しそうな、鬱屈とした若者のエネルギーがあって、でもどこか上品で。煌めきの中にある闇のバランスが、本当に素晴らしかったです。
今回は一番の若手だったけど、次に上演されるときは、彼が中心になっていることでしょう。これからますます活躍が期待されるガンヒョンさん。彼の初演M！を観られたことは、大変貴重な機会になると思います。観られた私たち、本当に幸せですね！
でもね、もう一回観たかったよ！なんで同時上演にしたの！！もう一回みたら、もっとたくさん気づくところがあったはず。無念です。
キム・ジュンス（シャチャルト）
～音楽に生かされ、音楽に囚われた天才～
天真爛漫で人を疑うことを知らない、まさに天から遣わされた音楽の天使。音楽の才能は天才的だけど、それ以外のことは何にもできない。NO MUSIC,NO LIFE.それがシャチャルト。
彼の人生とオーバーラップするところも大きく、ジュンスが演じるヴォルフガングは格別。観ていただいた方には伝わったのではないでしょうか。私の中ではシャチャルトはヴォルフガングそのものです。
とはいえ１０年ぶりに演じる作品、あの当時の全身から発光するようなパワーや無邪気さはもう無いだろうな、と思ってたら、またも裏切られました。
「うわぁぁあ、プレストヴィバーチェ！！」って、赤いコートを抱きしめて飛び出してきた、喜びを抑えきれない坊や（34）。目をキラキラさせながら、音楽への愛と歓びを歌う「♪僕こそ音楽」。え、天使・・・？天使なの？
アマデとも仲良しなシャチャルト。いつも楽しそうにキャッキャしながら曲を作ってる。彼にとって作曲は遊びと同じなんでしょうね。
いつまでも幸せが続くと信じて疑わなかったシャチャルトの人生に、母の死でふと影が差す。世界はいつも通りなのに、自分の周りだけが突如闇に包まれた瞬間。アマデを突き放し、母を抱きしめながら歌う「♪残酷な人生」。これまでと真逆の絶望に包まれた歌声の後ろで、鬼気迫る勢いで曲を描き始めるアマデ。味わったことのない悲しみを味わった瞬間、新しいメロディが降り注いでくる、母の死が創作の源になるという、まさに天才の苦しみを表現したシーンだと思います。
ところでこのシーン、死に際のお母さんを前に、アマデに駆け寄りながら「うわぁぁあ、ほら、新しいセレナーデができたんだ！これが売れたらまた幸せに暮らせるよ！」って無邪気に語り掛けるところがあったんだけど、これって赤いコートの冒頭との対比だよね？あー、こういう緻密な演技するんだったよね、この人（急所を突かれたオタクの顔文字）。
シカネーダやコンスタンツェたちとの新しい出会いで、新しい世界を知るシャチャルト。男爵夫人に背中を押されて、好奇心が爆発。お父さん、一緒に行こうよ！って目を輝かせて誘うのに、それを許さないレオポルト。好奇心が勝り、一人での旅立ちを決意します。シャチャルトには、お父さんへの反発を全く感じないんですよね。家族大好きっ子って感じ。
これまではお父さんの言う通りにしていればよかったけど、これからは自分で考えて生きていかなければいけない。「♪影を逃れて」で、アマデに、行け！と指をさすシーン。仲良しだった友達から、主従関係に変わったヴォルフとアマデ。悲劇の始まり。
2幕。才能を操り、成功を収めていくシャチャルト。でも、昔みたいな無邪気さはない。外の世界に触れ、汚れて、翼をもがれていく天使。でも、それに気づかずに必死に羽ばたくから、だんだん弱っていく。
世間知らずで、人に騙され、傷つき、大好きなお父さんからも見放されてしまう。でもその理由がわからないシャチャルト。「♪なぜ愛さないの」で、才能さえなければ、お父さんに愛してもらえたの？と泣きながら訴えるけど、お父さんが愛したのは君自身じゃなくて、君の才能なんだよ…辛いよ…
父の訃報を受け、絶望して狂っていくシーン。「悪魔！悪魔！！」と頭を抱えて泣き叫び、黄金星を歌う男爵夫人を恐怖の目で凝視しながら逃げていく。もう誰も信じられなくなったんだろうな。
そして、コンスタンツェに最後通告を告げられる中、アマデにアイデアを注ぎ込み「魔笛」を描きあげる。狂いながらも天から降りてくる美しい旋律。天才の苦しみってこういうことなのね。
自分の血を捧げてレクイエムを描くラストシーン。もう起き上がる力すらなく、アマデにペンを突き刺されても、弱々しく「やめて」というだけ。心臓にペンを突き刺そうとするアマデを、うんうん、と笑顔で迎え入れて、抱きしめるシャチャルト。最期に仲良しに戻れたのかな、と思わせる演技でした。
エンディングの父と子の抱擁、色んな見方ができると思うんですが、私の場合、シャチャルトver.は「レオポルトが抱きしめたのはアマデ（＝才能）」と受け止めてしまい、死してなお愛されなかった哀れな子供という、どうしようもなく救いのない物語になってしまいました。天才が故、普通の愛が許されなかったんだなあと。
この点、ジュンス本人はインタビューで、受け止め方は人それぞれだが、抱きしめられたのは子供時代のヴォルフガングであり、幸せな結末だと思いたいと言ってました*1
観る人によって異なるエンディングになる作品、モーツァルト！ってこんな作品でしたっけ…？
「10年の間に技術は上達したが、M！では技術に逃げたくなかった。可愛らしく『プレストヴィバーチェ！』と叫べるかが心配だった」と語っていたジュンス。初演と変わらないどころか、昔は歌いあげていたところを優しく語り掛けるように歌ってたり、悲しみの表現に磨きがかかってたり、進化したところがたくさんあって、努力する天才ってジュンスのことだなあと思わされた舞台でした。
パク・ウンテ（ウンチャルト）
～狂気の侘び～
韓国モーツァルト！10周年公演、レジェンドが再び登板。
年齢的にきっと最後となるであろう今回の公演。観られたことに本当に感謝です。
他のキャストより年齢を重ねたウンテさんにしか表現できない、侘しさに満ちた哀しみの世界。最後に観たので、いまだに立ち直れずにいます。辛い。
ウンチャルトは聡明で品行方正（にしか見えない）。天から与えられた才能に感謝しつつ、その才能で家族を支えている自負と責任感を感じます。靴紐もイアンノットで結べるので、そう簡単には解けません。
プライドが高く、自分が正しいと信じて疑わなかったウンチャルト。母の死を機に、迷いが生じます。男爵夫人に導かれ、きちんと考えたうえで旅立ちを決意。これまで共に歩んできた父と、初めて意見を違えます。
父から離れることを決意したとき、はっと気づくウンチャルト。今までは父の導きがあった。でもこれからは？自分の才能を使って、正しい道を一人で生きていかなければ。自問自答し、決意表明するような「♪影を逃れて」。前半は呟くように、後半にかけて必殺技の高音シャウトが炸裂。アマデ役のシモク君*2、そんなウンチャルトの決意をあざ笑うかのような態度で強く反発していたのが印象的でした。
２幕。ウィーンで成功し、自分の選択は正しかったと自信を持つウンチャルト。後ろでもの言いたげに見つめているアマデ。この辺りから狂気の予兆を感じる。
で、ウンチャルトで絶対に触れなければならないのが「♪愛していれば分かり合える」。これまで控えめだった、ウンテさんならではのアダルトな雰囲気全開。囁くようにコンスタンツェへの愛を歌い、跪いてプロポーズする姿は「あれ？ここってマディソン郡*3かな？？」と思わせるほど。１幕のコンスタンツェとの再会シーンでも、他のキャストは頬にキスなのに、ウンチャルトだけ口にチュッてするんですよね。そういうところ！！好きです！
幸せムードから一転、次第に精神のバランスを崩していくウンチャルト。アマデを操っていたようで、実は内側から喰われていたんだと思う。次々と新しいメロディが降り注ぎ、自我を保てなくなっていく感じ。アイデアを思い浮かべた瞬間に浮かべる、悪魔に憑りつかれたような笑顔。高潔な人が壊れていく姿って、怖い。
父から見放された理由を理解できないウンチャルト。こんなに支え合ってきたのに、なぜ理解してくれないのか。「♪なぜ愛さないの」では、辛うじて細い糸で支えられてきたウンチャルトの自我が、プツンと切れてしまったのを感じました。
以降、一気に崩れていく様は、まさに狂気。泣き叫ぶわけでもなく、ただひたすら静かに、哀しく、孤独になっていく姿。レオポルトの訃報を受けて、子供の頃からの出来事がフラッシュバックし、階段を上りながら「やめろ！やめろ！！」と涙を流し、うずくまった後。燦々と輝く男爵夫人の歌声を浴びたウンチャルトは、すっと立ち上がり、悪魔の笑顔を湛えて、頭からアイデアを取り出しながら去っていきます。
劇中、一番ゾッとした瞬間。ウンチャルト、完全に壊れた…
狂いながら描き上げる「魔笛」。コンスタンツェの声も全く届きません。
最後のシーンでは、ウンチャルトだけ他のキャストとセリフが違いました。
他のキャストは「心臓を刺せばよかった。でもそうしたらお前も死ぬ」とアマデに言うところを、「まだ心臓に血が残っていた」と心臓を取り出し、アマデに渡す仕草をするウンチャルト。そっとアマデを抱きしめたまま迎えた最期の枯れ姿。
激しさがないだけに、じわじわ沁みてくる侘しさ。うわ、これ知ってる、しばらく辛いやつ。１週間経った今でもまだ辛いです*4。
ちょうど配信日に出演最終回を迎えたウンテさん。まもなく次回作のキンキーブーツが始まります。侘びの世界から飛び出して、世界中にハッピーを撒き散らしていただきたい。ダンスがんばって！！！*5
以上、主演３キャストの感想でした！最後まで読んでくださってありがとうございました！！改めて今回配信に関わっていただいた関係各位に、心からの感謝を！
韓国ミュージカルのここがすごい（番外編）
こんにちは。
前回は、韓国ミュージカルの盛んな理由やそのすごさなどを思いのままにしたためましたが、今回は、書ききれなかった小ネタを中心に番外編としてお送りしたいと思います。
公演開始時間
日本で平均的な勤務形態の会社員だと、終業後の観劇って時間的にかなり厳しいですよね。平日日中は絶対無理だし、夜公演も18時台じゃ定時退勤でも間に合わない。必然的に土日公演に偏ることになります。ただでさえ取りにくいチケットが、更に手の届かない存在に…
その点、韓国の平日公演は夜20時開演が平均的。軽く腹ごしらえする時間もあるので、公演中に飢餓感で気が遠のくこともありません。ただし終演が23時頃になっちゃうので、終電には要注意。韓国はタクシーが安いし、深夜バスもたくさんあるので、心配しなくても大丈夫ではありますが。
ジェンダーフリーキャスティング
ここ数年、小劇場系の演劇・ミュージカルを中心によく見られるのが「ジェンダーフリーキャスティング」。つまり、役の設定上の性別枠にとらわれずに演者をキャスティングすることです。原作では男性のキャラクターに女性の俳優をあてたり、その逆も然り。
ジェンダーギャップ指数は下から数えたほうが早い韓国社会ですが*1、MeToo以来、ものすごい勢いで社会の風潮が変わってきているのを感じます*2。その流れは舞台の世界でも顕著。
演出の自由がきく小劇場系作品から広がりつつありますが、今年開催された「ジーザス・クライスト・スーパースター」のコンサートでは、ユダ役を女性のチャ・ジヨンさんが演じられていました。
大劇場でも、ジェンダーフリーキャストを楽しめる日が近いかもしれません。
2020年2月に開催されたJCSコンサートのキャストボード。ユダが日替わりで超豪華。ヘロデ王もジェンダーフリーキャスト。
宣材のセンス
ここは、文章を並べたてるよりも、日韓で制作された同じ作品のイメージを比べていただくのが早いと思います。作品の世界観とキャスト、どちらに重きを置いているのかが一目瞭然。
ちなみに韓国版ボディーガードのイメージ、レイチェルのみでフランクはいません。スポットライトを浴びて一人毅然と立つ姿。ボディガードといえば思い出されるのが、フランクがレイチェルを抱き上げて窮地を脱するシーンですが、前述のMeTooムーブメントがここにも現れているのを感じます。
・笑う男
・ボディガード
供給の多さ
韓国ミュージカルに興味を持って、ちょっとネットで検索してみた方は、その情報量に驚かれたのではないでしょうか。
ネット社会韓国ならではの宣伝方法、開幕前も開幕後も、とにかくメディアでの情報供給が凄いんです。
最近多いのが、開幕前のシッツプローブ配信。オーケストラと俳優が一緒に行うリハーサルのことですが、韓国のグランドミュージカルでは、これを宣伝用にネット配信することが多くなってきています。加えて、配信後〇時間はチケット割引などのイベントも行っていて、販売戦略の巧さを感じます。
また、舞台上で本番通り行うリハーサル（プレビュー公演）をメディアに公開したり、メディア向けの公演（プレスコール）を行うことも珍しくありません。
舞台の公開だけでなく、大劇場作品では、作品のイメージ動画（ティーザー）や有名ナンバーのMVを制作するのも一般的になっています。
公開後も「カーテンコールウィーク」等と称して、カーテンコール撮影OK！となる期間が突如開催され、腕に覚えのあるオタクたちがこぞって高画質映像をSNSにアップします。
実際の舞台を観る前も観た後も映像として楽しめるのは、観客側にとって大変有難いですよね。
一方、韓国では、DVDやCDの制作はあまり行われません。形に残すことにこだわらない国民性や制作側の事情もあるのかもしれないですが、作品をスルメのように楽しみたい性質の日本国民としては、DVD化を切に願うところです。
劇場がテーマパーク
初めて韓国ミュージカルを観に行かれる方には、開演1時間半前には現場に到着することを強くお勧めします。
自己肯定力が高く、老若男女自撮りを楽しむ国民性。装飾や盛り付け重視のカフェやレストランが大繁盛し、いわゆる「映え」スポットが多数存在する韓国ですが、もちろん劇場も同じ。劇場内は完全に作品のテーマパークと化しています。開演1時間半前から始まるチケット引き換えを終えた後、開演まで目いっぱい楽しめること間違いなしです。
ちなみに韓国の劇場では座席入り口でチケットをもぎるので、公演会場以外のロビーやグッズ売り場等はチケット無くても入れます。開演後しばらくは、遅れた人のためにロビーで当日の公演映像や音を流していることもあるので、公演を観ない日でも色々と楽しむことができます。
まず、韓ミュといえばまずはキャストボード。
後から見返してみると、今の推しや気になる人を発見したりして結構楽しい。
そして、舞台上のセットを模したフォトスポット。
衣装展もやっていたりする。
人柱シリーズ
芸術の殿堂の吹き抜けシリーズ
おまけ１。座布団一枚あげたくなったハムレット:アライブのグッズ売り場。
買うべきか、買わざるべきか。それが問題だ。
おまけ２。チケットがなくて入れなかった2016年ドリアングレイの千秋楽。劇場側のはからいで、公演を全てモニターで流してくれた。小さなモニターを必死に双眼鏡で眺めるオタクたち。そこに国境はない。
退勤道
公演を終えた俳優さんが、帰り際にファンとの交流を持つ場所、それが退勤道。
軽く挨拶するだけの俳優さんもいれば、ファンの質問に答えたり、一人ひとりと握手しながら言葉を交わす俳優さん、サインや２ショット写真に応じる俳優さんもいらっしゃいます。
韓国芸能界は芸能人とファンとの距離が近いことが有名ですが、舞台俳優はそれがさらに顕著。退勤道は、主にファンカフェといわれる私設ファンクラブが中心になって運営されており、その日の俳優さんの予定によって、開催の可否やルールが事前に通知されます*3。これに従わないと、いわゆる「ヤラカシ」になるので注意。
退勤道に参加するファンは、カテコ終了と同時に福男さながらのダッシュをかまします。早く現場に到着した者から、良いポジションを確保できるからです。まさに弱肉強食。
チョ・スンウ先輩の退勤道に出くわした私の妹は、ヌーの大移動に遭遇したような恐怖を感じたと言ってました。
最近はコロナ感染防止のため、退勤道もほとんど実施されていないようです。今後、この風物詩も無くなるのだろうなと思うとちょっと寂しい気もしますが、安全第一ですもんね。
以上、韓国ミュージカルの小ネタ集でした。お付き合いいただきありがとうございました。
また思いついたら書き足していきます！
【号外】韓国版モーツァルト！日本配信キャスト紹介
韓国版モーツァルト！の日本での配信が発表されました！！
やったー！！！！！！！
しかも３キャストともやってくれるなんて、恐悦至極。韓流ぴあ様とＥＭＫ様には五体投地で御礼申し上げます。
詳細はこちら↓↓↓
～韓流ぴあPresents Kミュージカルシネマ～「モーツァルト！」オンライン配信
先日のブログ記事で、大変うれしいことに、「最近韓国ミュージカルに興味持ちました」と言ってくださった方がいらっしゃいました。
で、「どのキャストがお勧めですか？」って聞かれるのですが、
「みんなちがって、みんないい」
としか言えないです。だって、１０周年記念の神キャストなんですよ？
とはいえ、都合上、全部観られない方もいらっしゃると思いますし、とりあえず１公演だけ、と思っていらっしゃる方も多いかと思います。
そんな方のために、今回は号外として、公演別のキャストや見どころのご紹介をさせていただきます。いつもと同様、独断と偏見であることをご承知おきください。
配信公演別キャスト表
ティーザー映像。全キャスト出てくるのでイメージ湧きやすいです。
2020 뮤지컬 모차르트! 10주년 기념 공연 CAST TEASER
メインキャスト別紹介
◆モーツァルト（ヴォルフガング）
・パク・ウンテ
別名・神。世界を包みこむような唯一無二の美声に慈愛に満ちた眼差し、凛とした立ち姿に繊細な指先。流れる涙は聖水か。JCSのジーザス役は、もはや伝説。
2010年のＭ！初演時に、ケガで降板したチョ・ソンモさんの代役として、ジュンスとともに主役に抜擢され、一躍スターダムへ。今や韓国で知らない人はいないミュージカルスターです。
御年39歳で演じる円熟のヴォルフガング。期待してはいたけれど、まさかまた登板してくれるなんて。韓国のミュージカルファンが最も湧いたキャスティングです。これは観ないわけにはいかない。
ちなみに次回作はキンキーブーツのローラ。神がドラァグクイーンに！！
そんなウンチャルトの「影を逃れて」。
[#리플레이모차르트!] 시츠프로브 LIVE ♬ '내 운명 피하고 싶어' 박은태
・パク・ガンヒョン
今、間違いなく韓国ミュージカル界で一番勢いがあるライジングスター。ここ数年で「笑う男（グウィンブレン）」「エリザベート（ルキーニ）」「エクスカリバー（ランスロット）」「マリーアントワネット（フェルゼン）」などの大作に次々と出演し、一躍人気を集める。静かに淡々と、どこまでも伸びていく美しい歌声、爆発的な歌い上げ、そして端正な顔立ち。これで人気が出ないはずがない。
３キャストで一番若手の30歳だけど、俳優としては最も正統派かも。次回作はグレート・コメットのアナトール。色男！！
そんなガンチャルトの「影を逃れて」*1
[뮤지컬 모차르트!] 박강현 '내 운명 피하고 싶어' MV
・キム・ジュンス
この人の紹介必要なんでしょうか？ってくらいの知名度ですが、一応。
世界的人気を誇った某アイドルグループから脱退（といっていいのかはさておき）後、2010年の韓国版初演Ｍ！で、代役として初めてミュージカルの舞台を踏む。
もはやヴォルフガングその人である。
「所詮アイドルでしょ？」とか「声が苦手*2」とか思っているそこのあなた、ひとまず観てから判断してください。彼の凄さは舞台上でこそ発揮されるものなのです。詳細は以前の記事を参照ください。toto8796.hatenablog.com
そんなシャチャルト*3の「影を逃れて」。
全くタイプが違う、三人三様の「影を逃れて」。あえてノーコメントで掲載しました。
これだけで「３公演全部観てくれ」という私の思いは伝わったのではないでしょうか。
では、続いてサブキャストをご紹介。
◆コンスタンツェ
・ヘナ（パクウンテ主演回）
2013年にアイドルグループのメンバーとしてデビュー後、2017年からミュージカルの世界へ。私が実際観たのは2019年「ジキル＆ハイド」のルーシー役。見た目の可愛らしさからは信じられない圧倒的声量と伸びのある高音。「トゥーランドット」「ボディーガード」などの歌唱力不可欠作品で主演を務める。キュートなのにパンチもあるので絶対コンスタンツェはハマり役。次回作はグレート・コメットのナターシャ。
ヘナさんの「私は芸術家の妻だから(((邦題:ダンスはやめられない))」
해나 - 난 예술가의 아내라 (뮤지컬 모차르트 中) [열린 음악회/Open Concert] 20200524
・キム・ヨンジ（パク・ガンヒョン主演回）
私、この人のコンスタンツェが一番観たいんです。元々SeeYaというアイドルグループのメインボーカルとして活躍してて、ミュージカルデビューは2019年「マリーアントワネット」のマルグリット役。迫力ある（ドスの効いた）歌声と壮絶な存在感で圧倒されました。私の好みです。
それにしても、前述のヘナさんといい、女帝オク・ジュヒョン様といい、韓国アイドルって本当にすごいな！
ヨンジさんの「私は芸術家の妻だから」
[#리플레이모차르트!] 시츠프로브 LIVE ♬ '난 예술가의 아내라' 김연지
・キム・ソヒャン（キム・ジュンス主演回）
小劇場系からグランドミュージカルまで、色んな舞台にひっぱりだこの超売れっ子俳優。ブロードウェイにも進出してて、「ミス・サイゴン」でジジ役を演ったらしい（わかる！）。パワフルな歌声はもちろん、私の一押しポイントはその卓越した演技力。ここ最近では「マリー・アントワネット（マリー）」「エクスカリバー（ギネビア）」などに出演。現在「M!」「ルドウィク」「マリー・キュリー（７月末～）」「マーダーバラッド(8月〜)」を掛け持ち中。超働き者です。
ソヒャンさんの「私は芸術家の妻だから」
200519 모차르트 콘서트 #5. 김소향 난 예술가의 아내라
いかがでしたか？これまた三人三様の「私は芸術家の妻だから」。
全組み合わせ観てみたくなったでしょ？でしょ？
次は大司教様ですよ！
◆コロレド大司教
・ミン・ヨンギ（パク・ガンヒョン／キム・ジュンス主演回）
声楽を基礎としたよく響く低音が持ち味。2010年の初演時からコロレドを務める。「レベッカ」のマキシムやら「ルドルフ（ザラストキス）」のターフェやら「エリザベート」のフランツやら、いわゆる”渋オジ”演じさせたらこの方の右に出る者はいない。
私の中で、コロレド大司教といえばヨンギさん。
ヨンギさんの「神よ、何故許される」
[3D SOUND/요청] 민영기 _ 어떻게 이런 일이 / 뮤지컬 “모차르트!”
・ソン・ジュノ（パク・ウンテ主演回）
ヨンギさんと同じく声楽出身の正統派ですが、ヨンギさんより声は甘めで、色男役が多い。2010年「オペラ座の怪人」ラウル役でミュージカルデビューし、クリスティーヌ役の妻（後述）と出会い結婚。「エリザベート（フランツ）」「マリー・アントワネット（フェルゼン）」等、舞台でも頻繁に夫婦共演している。ミュージカル俳優としての実力も相当ですが、天賦のコミュ力とトーク力を兼ね備えており、多分韓国ミュージカル界で一番顔が広い。
実はウンテさんより歳下の37歳。ヴォルフガングより若い大司教様という逆転現象が見どころの一つ。
ジュノさんの「神よ、何故許される」
[#리플레이모차르트!] 시츠프로브 LIVE ♬ '어떻게 이런 일이' 손준호
タイプが違う二人の大司教様。お好みはどちらでしょうか？
では最後、男爵夫人です。
◆男爵夫人
・キム・ソヒョン（パク・ガンヒョン主演回）
ソン・ジュノさんの妻。ソウル大学声楽科→オペラ→ミュージカル俳優という華々しい経歴の持ち主。可憐を絵に描いたような外見にふさわしいソプラノボイス。「エリザベート」「マリー・アントワネット」「アンナ・カレーニナ」等に主演。お姫様役を演らせたらこの人の右に出る者はない。有名な持ち歌があるとはいえ、サブキャラの男爵夫人に主役級俳優を持ってくるのはさすが10周年記念公演。ソヒョンさんの歌う「星から降る金」、母性に満ちた包み込むような愛と優しさを感じで、自然と涙が出ます。
ソヒョンさんの「星から降る金」
김소현 - 황금별 (뮤지컬 모차르트 中) [열린 음악회/Open Concert] 20200524
・シン・ヨンスク（パク・ウンテ／キム・ジュンス主演回）
超パワフルな高音が持ち味。2010年初演時にも男爵夫人を務め、韓国では「黄金星のヨンスク」という二つ名があるほど、男爵夫人といえばヨンスクさんというイメージ。「ファントム」のカルロッタや「レベッカ」のダンヴァース夫人、「エクスカリバー」のモルガナなど、歌で圧を与える役が多め。生命力溢れる「エリザベート」も最高でした。ヨンスクさんの「星から降る金」は、さながら子を千尋の谷から突き落とす母ライオンのよう。「オラー！！もたもたせずに行ってこいや！」と言わんばかりの背中を押される歌声、大好きです。
ヨンスクさんの「星から降る金」
ちなみに「星から降る金」の韓国語のタイトルは”황금별”＝黄金星。
大好きなので二人のデュエットバージョンもおまけ。全くタイプが違う二人の男爵夫人。同じ曲なのに受ける印象は全く違うのが面白いです。
[#리플레이모차르트!] 시츠프로브 LIVE ♬ '황금별' 신영숙, 김소현
もし１つだけ観るなら・・・
１公演しか観られない方、すみません。余計に選べなくなってしまったかもしれないですね。
もし、ミュージカルは好きだけど、韓国ミュージカルは初めて、という方であれば、ぜひキム・ジュンス回をお勧めしたい。
作曲家のリーヴァイ先生が「彼こそがモーツァルトだ」と惚れ込んだシャチャルト。日本じゃ絶対観られない、ある意味異種格闘技のような組み合わせ。韓国ミュージカルならではの勢いを感じられると思います。
逆に、ジュンス目当てで配信を検討されている方、この機会に別のキャストもぜひ観てみてください。韓国ミュージカルの質の高さを実感できると思います。
配信日が待ち遠しいですね。
改めて、配信に携わる全ての方々へ、ありがとうございます！！
---7/19追記---
韓国ミュージカルはカテコで歌唱するのがデフォルトなんですが、初演以来、カテコで歌われるのは主演のヴォルフガングによる「僕こそ音楽」でした。それが今回の１０周年記念公演では全キャスト合唱による「星から降る金」に変更になっています。世界が不安と混沌で覆われている今だからこそ、この歌に込められた”旅立ちへの希望”というメッセージが胸に響きます。
10周年キャストがリモートで合唱する”황금별”
韓国ミュージカルのここがすごい
「愛の不時着」すごいブームになってますね。
私が韓国のアイドルやら舞台やらにハマっているのを嘲笑していた友人から「今まですまんかった。ところでヒョンビンについて教えて」というシンプルかつ明快なLINEが来たので、時代は変わったなと感じる今日この頃です。
半年前は韓流が禁忌になってたテレビでも、またドラマやらK-POPやらを取り上げてて、やっぱり文化の力ってすごいなと思います。
コロナ禍の中で公演を続けている韓国ミュージカルも世界から注目されてますよね。有名作品のシッツプローブやプレスコールがネット配信されてたので、最近初めて韓国ミュージカルに触れた方も多かったのではと思います。
ちょっと前までは、韓国にミュージカル観に行くっていうと「え？韓流ってミュージカルもあるんだ～」的な返しをされていたのですが、韓国オリジナル作品が日本で上演されている昨今、一般に知れ渡ってきたのではないでしょうか。
そこで今回は、韓国ミュージカルって何でそんなに盛んなの？何がそんなにすごいの？ってポイントを、私なりにまとめてみたいと思います。
韓国でミュージカルが盛んな理由
世宗芸術劇場や国立劇場といった何千人規模の収容力を誇る大劇場から、数百～千人規模の中劇場、１００人規模の小劇場が集まる大学路地区など、首都ソウルだけでも数えきれない劇場がある韓国。地方都市の仁川や城南、水原にも立派な劇場があるし、釜山には最近ミュージカル専用劇場ができて、ライオンキングやオペラ座の本国招聘公演もやってました。
全国あらゆる場所にあるたくさんの劇場で、連日様々な公演が開催されてるんです。うらやましい！
韓国でこんなにミュージカルが盛んな理由って何なんでしょう。
歌って踊る国民性
そう、韓国人、歌って踊るのが大好き。
よく韓国ドラマで、カラオケシーン出てくるじゃないですか？みんな狂ったように歌い踊るやつ。あと、家で音楽聞きながら無心に踊りまくるシーンとか。
タクシー運転手もバス運転手もノリノリで歌いながら仕事してるし（たまに車内カラオケ状態）、選挙では候補者がテーマソングに乗せて踊っている。それが韓国。
歌い踊る遺伝子を持つ韓国国民にとって、ミュージカルは日常的な娯楽。
休みの日に家族やカップルでミュージカルを見に行くのも珍しくありません*1。
日本では、まだまだ一部のコアなファンの趣味という印象が強いミュージカルですが、韓国では客層の幅広さに驚かされます。特にここ最近の大劇場作品はその印象がさらに強い。チケット代の差はあれど、映画と同じ程度の敷居なのでは。
だから、上演中に地声でしゃべりながら観たり、前の席にかぶりついてたり、アイスアメリカーノ（韓国人の国民ドリンク）飲みだしたりする人がいたりするのも韓国劇場あるある。もちろん係員さんが注意してくれるけど、映画館感覚なのだろうなと思います。
充実した教育環境
韓国では、音楽や舞台に関わる仕事を志す人が多い。特に裕福な家庭では、勉強が得意な子には医者か法曹を、そうでない子には音楽家を目指すよう教育すると聞いたことがあります。
高校レベルから芸術学校のような専門学校が各地にあるし、ほとんどの大学で芸術科が設置されてたり、音楽や舞台芸術の高等教育が受けられる環境が充実しています*2。
ミュージカル俳優でも、リュ・ジョンハンさん、カイさん、キム・ソヒョンさんはソウル大学（日本でいう東大）声楽科出身。留学も盛んなので、海外で学ばれてきた方もたくさんいます。
演者に限らず、舞台監督や演出家、作曲家も国内から多数輩出されています。韓国人作曲家・演出家による作品は、フランケンシュタイン、SMOKE、メイビーハッピーエンディングなど日本でも上演された有名作品もあれば、大学路で上演されている作品まで含めると数知れず。
女性の音楽監督（指揮者）が多いのも、充実した音楽環境が背景にあるからでしょうか。EMKのキムムンジョン監督とか、ODのウォンミソル監督とか。日本のオケで女性指揮者がいることはほとんどないので、毎回新鮮みがあります。
芸術を志す人が多いからこそ、その活躍の場となる舞台の数も増えるし、成熟して多様化していくのではと思います。
韓国ミュージカルのすごいところ
実力主義
前述のとおり、教育熱心な韓国らしい面があるミュージカル界ですが、一方、学歴関係なく、ドラマのような経歴を持つ俳優さんも実在します。
例えば、ボクサーを目指していた青年がオーディションで主役に抜擢されたり*3、野球選手からミュージカル俳優に転身した人がいたり*4、大学で経営学を学んでいた人が25歳でオーディションに合格してライオンキングに出たり*5、スタンフォード大学医学部で学んでいた人がいたり*6、これだけでミュージカルの題材になりそうじゃないですか？
超実力主義の韓国芸能界、ミュージカルもその例に違わず、主役を公開オーディションで募集することも珍しくない。もちろん、人気取りのための配役がされることもあるけど（EMKとかEMKとかEMK*7）、実力がない人がキャスティングされると、固定客以外は入らないので、明らかにお客さんの入りが悪い。反対に、無名でも実力がある人だと、評判でじわじわと席が埋まり、千秋楽に近づくにつれて席が取れなくなっていく。
事務所の力や経歴なんて関係なく、全くの無名俳優が、オーディションで大役をつかんでライジングスターに！そんなシンデレラストーリーってかアメリカンドリーム（フラッシュダンス？）が実現するのが韓ミュ界なんです。
だから次々と若手俳優が出てくるし、層が厚い。タイトルロール張れる人気も実力も兼ね備えた俳優が山の数ほどいる。
2019年のエリザベートはトリプルキャストだし、ジキル＆ハイドなんて５キャストですよ。2018年フランケンシュタインは３アンリ４ビクターで１２パターン。若手からベテランまで色んなキャスティングで、違った楽しみ方ができる。観客として単純にうらやましいです。
開かれたチケット販売
韓国での観劇チケットは、ほとんどの公演がインターパークやYES24等の大手ショッピングサイトで販売されます。観客は、好きな座席を選んで購入が可能。
思い立ったときに買えるし、都合悪くなったら前日までキャンセルもできる*8。英語や日本語のサイトもあるので、海外からでも気軽にチケットが取れます。
この点、「ちょっと観てみたいな」というお茶の間気分じゃ一生チケット取れない日本とは大違い。
チケット価格は、大劇場で７千円～１万５千円、小劇場で３千円～７千円程度。韓国の物価からすると高額だと思いますが、割引のキャンペーン期間があったり、学割があったり、リピーター割があったり、劇場がある地区の住民割引があったりと、割引制度がかなり充実してます。
もちろん、当日窓口購入もＯＫ。「今日時間あるからミュージカル観に行こうかな」という気軽さで行けちゃうのです。チケット販売サイトでは空席が目立つ公演でも、当日は席が埋まってる、なんてこともよくあります。
予算
2016年に韓国版モーツァルト！の演出を手掛けた小池修一郎先生が「日本では映像や照明にお金をかけると（予算的に）小道具が減ったりする。EMKは大変大きな予算を持っているので、（何かを削ることなく）すべて制作してくれた」と語っておられました（出典元）。
韓国ではエンタメを海外戦略として支援していて、かなりの予算が充てられているそうですが*9、そのせいもあるのか、韓ミュは舞台装置や演出、衣装などの美術にものすごくお金がかけられてます。
歌と芝居があればミュージカルは成り立つけれど、その世界観に没頭するためには、視覚的効果はなくてはならないものですよね。
私が「金かかってんなー！！」と感嘆した舞台をいくつかご紹介。
①「笑う男」
ありとあらゆるところに金を使っている代表格。荒れる大海原や流れる川、サーカスの舞台など、転換ごとに全く違う装置が出てくる。中でも私が好きなのは貴族院のセット。日本版は観てないんですが同じだったのかな。44分20秒あたり～
②「ベンハー」
俳優さんたちの筋肉合戦もさることながら、とにかく「馬」。ユダとメッセラの騎馬戦車での決闘シーン。1分30秒あたり～。生で見るとものすごい迫力。
뮤지컬 '벤허' 프레스콜 민우혁·문종원 외, 출전, 죽음의 질주
③「フランケンシュタイン」
これくらいのやつじゃないと生命創造できないよねと思った装置がこちら。
'프랑켄슈타인' 위대한 생명 창조의 역사가 시작된다 - 민우혁, 박민성 Musical 'Frankenstein' with Min Woo Hyuk, Park Min Sung
④「ドラキュラ」
衣装といい小道具といいクルクル回る舞台といいプロジェクションマッピングといい、すべてにおいて徹底して世界観を作り上げている渾身の作品。
2020 뮤지컬 드라큘라(Dracula : The Musical) CLIP - It's Over (김준수, 손준호)
カーテンコール
韓国でミュージカルを観る時、その楽しみの半分を占めているといっても過言ではないもの。それがカーテンコール（カテコ）。
日本のカテコでは、キャストが登場・礼→オケに拍手→捌ける→登場・礼・捌ける→～繰り返し～→終、ってのが一般的ですよね。観客側にも暗黙の了解があって、１・２回目では立たず、３度目でスタオベOKみたいな。どのタイミングで立つの？むしろ立たないの？てかいつまで繰り返すの？と、周りの空気を読みながら尻をもぞもぞさせる小心者の私。あれって決まりあるの？
韓国では、本編のスピンオフ的なカテコが多いんです。
登場時にソロ曲のメインパート歌ってくれたり、本編では幸せになれなかった二人が幸せそうだったり、仮面に隠された顔が見えそうになったり。
それまで静かだった観客席が歓声と拍手に溢れ、一気にライブ会場並みの盛り上がりに。もちろんカテコに入った瞬間、全員スタンディング。
舞台からもらった感動を、全員がその場で一気に爆発させるもんだから、泣き叫びに近い感じになります。コロナの影響で今後規制されるかもしれないので、ハンカチ噛みしめる等の対策が必要かも。
カテコについて語りだしたらキリがないのですが、私が大好きなカテコをいくつかご紹介。
①「ファントム」
本編でクリスティーヌとパパに見守られながら、息を引き取るエリック。
一転、カテコではクリスティーヌに一輪のバラを差し出し、幸せそうにハグする二人。よかったね～、本当によかったね～って泣きながら拍手する観客。
その後、クリスティーヌも捌け、一人舞台奥に歩いていくエリック。音楽の盛り上がりとともに、観客席を振り返り、仮面に手をかけ・・・外した！！！瞬間、暗転。
～完～
韓国のファントムの仮面は、顔の上半分が完全に隠れるデザインなので、本編中はほとんど顔が見えないんです。それが最後の最後でチラリと見えたり見えなかったり。そこは照明のスイッチング次第。暗転後の客席、みんな地団駄踏み鳴らして悲鳴上げてます。
②「ジキル＆ハイド」
ジキハイはカテコで歌わないので、途中までは日本のに近いかもしれない。が、最後の最後。俳優さんによって違うんですけど、まあ見てください。
有名なチョ・スンウ先輩ver.です。6分30秒あたり～。シンプルだけど、最後まで舞台を掌握している。暗転と同時に突き上げる拳。かっこいい。
ちなみにカテコ最強伝説を持つパク・ウンテ神ver.は、シャツを破って大胸筋を見せつけます。
150404 지킬앤하이드 저녁공연, 조지킬 막공 무대인사
③「スリルミー」
度肝を抜かれた2019-20のスリルミーのキムヒョンジン私、ノユン彼ペアのカテコ。
重い空気の中、歓声もなく、狭い会場に鳴り響く「スリルミー」の旋律と拍手。
お辞儀をして無表情で舞台奥に歩いていく二人。
立ち止まり、振り返った後、最後の「♪スリル♪ミー」に合わせて彼の胸倉をつかみ、自分に引き寄せてキス、するかどうかのところで、暗転。
小動物のようで実は狂気の支配者だったヒョンジン私を象徴するのようなカテコで、終わってからしばらく震えが止まりませんでした。
④「ヘドウィグ」
韓国ヘドウィグのカテコはライブです。ステージから撒かれる水で濡れながらヘドバンする客席。ジャンプで揺れる会場。もちろんアンコールあり。
チョン・ムンソンさんのときは盛り上がりすぎて、カテコ入れて3時間超えたこともありました（本来は休憩なし120分）。
まだまだたくさん語りたいことはあるのですが、長くなってしまったので、ひとまずこれにて。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。
早く世界に平穏が戻って、自由に観劇できる日が訪れますように。
*1:梨泰院クラスでも、デートでミュージカルに誘うシーンがありました。「VIP席だぜ？」ってね。なんの公演だったのか気になる。時期的にドラキュラだったのでは。
*2:韓国では専門学校でなくても、全ての高校の選択科目に演劇があるそうです
*3:チェ・ウヒョクさん。2015年のフランケンシュタイン再演のオーディションで1,000人の中からアンリ役に大抜擢。ケガでボクサーの夢を諦めかけたとき、ジャックザリッパーを観て「これだ！」と直感し、1年間猛練習したのだとか。すごい。
*4:ミン・ウヒョクさん。元々はアイドルにあこがれてSMエンタを受けたこともあったのだとか。元野球選手らしく、とにかくガタイがいい。
*5:パク・ウンテ（神）様。劇団四季の公開オーディションでアンサンブルを受けに行ったら５番手に大抜擢されてライオンキングに出演。その後実績を積みながら、2010年にケガで降板したチョ・ソンモさんの代役でモーツァルト！主役を務め、一躍ミュージカル界のスターになりました。
*6:マイケル・リー（神）様。元々はアメリカ国籍で、BWのミスサイゴンがデビュー作。2019年のヘドウィグ千秋楽で「僕は勉強ができたので（笑）ミュージカル俳優になるという夢を叶えるまでに遠回りしちゃったけど、諦めずに追い続ければ夢はきっと叶うものだよ」とお話しされてました。素敵な方。
*7:アイドル起用乱発、キャスト限定のグッズ制作販売など、その金の亡者っぷりから韓国のミュージカルファンに超嫌われている。でも有名な海外作品の版権はほぼEMKが握っている。韓ミュ界におけるひと昔前のSMエンタのような存在。
*8:キャンセルした時期によって手数料は引かれるけど、上限がチケ代の20％とか、大変良心的。今回コロナで行けなくなったチケットについては、手数料引かずに全額返金していただきました。インパとYESに一生ついてく。
*9:対GDP比でみた韓国の文化予算は日本の約10倍。数年前にフランスを抜いて、文化予算の面だけで見れば世界一の文化大国だそうです。出典元
