こんにちは。
前回は、韓国ミュージカルの盛んな理由やそのすごさなどを思いのままにしたためましたが、今回は、書ききれなかった小ネタを中心に番外編としてお送りしたいと思います。
公演開始時間
日本で平均的な勤務形態の会社員だと、終業後の観劇って時間的にかなり厳しいですよね。平日日中は絶対無理だし、夜公演も18時台じゃ定時退勤でも間に合わない。必然的に土日公演に偏ることになります。ただでさえ取りにくいチケットが、更に手の届かない存在に…
その点、韓国の平日公演は夜20時開演が平均的。軽く腹ごしらえする時間もあるので、公演中に飢餓感で気が遠のくこともありません。ただし終演が23時頃になっちゃうので、終電には要注意。韓国はタクシーが安いし、深夜バスもたくさんあるので、心配しなくても大丈夫ではありますが。
ジェンダーフリーキャスティング
ここ数年、小劇場系の演劇・ミュージカルを中心によく見られるのが「ジェンダーフリーキャスティング」。つまり、役の設定上の性別枠にとらわれずに演者をキャスティングすることです。原作では男性のキャラクターに女性の俳優をあてたり、その逆も然り。
ジェンダーギャップ指数は下から数えたほうが早い韓国社会ですが*1、MeToo以来、ものすごい勢いで社会の風潮が変わってきているのを感じます*2。その流れは舞台の世界でも顕著。
演出の自由がきく小劇場系作品から広がりつつありますが、今年開催された「ジーザス・クライスト・スーパースター」のコンサートでは、ユダ役を女性のチャ・ジヨンさんが演じられていました。
大劇場でも、ジェンダーフリーキャストを楽しめる日が近いかもしれません。
2020年2月に開催されたJCSコンサートのキャストボード。ユダが日替わりで超豪華。ヘロデ王もジェンダーフリーキャスト。
宣材のセンス
ここは、文章を並べたてるよりも、日韓で制作された同じ作品のイメージを比べていただくのが早いと思います。作品の世界観とキャスト、どちらに重きを置いているのかが一目瞭然。
ちなみに韓国版ボディーガードのイメージ、レイチェルのみでフランクはいません。スポットライトを浴びて一人毅然と立つ姿。ボディガードといえば思い出されるのが、フランクがレイチェルを抱き上げて窮地を脱するシーンですが、前述のMeTooムーブメントがここにも現れているのを感じます。
・笑う男
・ボディガード
供給の多さ
韓国ミュージカルに興味を持って、ちょっとネットで検索してみた方は、その情報量に驚かれたのではないでしょうか。
ネット社会韓国ならではの宣伝方法、開幕前も開幕後も、とにかくメディアでの情報供給が凄いんです。
最近多いのが、開幕前のシッツプローブ配信。オーケストラと俳優が一緒に行うリハーサルのことですが、韓国のグランドミュージカルでは、これを宣伝用にネット配信することが多くなってきています。加えて、配信後〇時間はチケット割引などのイベントも行っていて、販売戦略の巧さを感じます。
また、舞台上で本番通り行うリハーサル(プレビュー公演)をメディアに公開したり、メディア向けの公演(プレスコール)を行うことも珍しくありません。
舞台の公開だけでなく、大劇場作品では、作品のイメージ動画(ティーザー)や有名ナンバーのMVを制作するのも一般的になっています。
公開後も「カーテンコールウィーク」等と称して、カーテンコール撮影OK!となる期間が突如開催され、腕に覚えのあるオタクたちがこぞって高画質映像をSNSにアップします。
実際の舞台を観る前も観た後も映像として楽しめるのは、観客側にとって大変有難いですよね。
一方、韓国では、DVDやCDの制作はあまり行われません。形に残すことにこだわらない国民性や制作側の事情もあるのかもしれないですが、作品をスルメのように楽しみたい性質の日本国民としては、DVD化を切に願うところです。
劇場がテーマパーク
初めて韓国ミュージカルを観に行かれる方には、開演1時間半前には現場に到着することを強くお勧めします。
自己肯定力が高く、老若男女自撮りを楽しむ国民性。装飾や盛り付け重視のカフェやレストランが大繁盛し、いわゆる「映え」スポットが多数存在する韓国ですが、もちろん劇場も同じ。劇場内は完全に作品のテーマパークと化しています。開演1時間半前から始まるチケット引き換えを終えた後、開演まで目いっぱい楽しめること間違いなしです。
ちなみに韓国の劇場では座席入り口でチケットをもぎるので、公演会場以外のロビーやグッズ売り場等はチケット無くても入れます。開演後しばらくは、遅れた人のためにロビーで当日の公演映像や音を流していることもあるので、公演を観ない日でも色々と楽しむことができます。
まず、韓ミュといえばまずはキャストボード。
後から見返してみると、今の推しや気になる人を発見したりして結構楽しい。
そして、舞台上のセットを模したフォトスポット。
衣装展もやっていたりする。
人柱シリーズ
芸術の殿堂の吹き抜けシリーズ
おまけ1。座布団一枚あげたくなったハムレット:アライブのグッズ売り場。
買うべきか、買わざるべきか。それが問題だ。
おまけ2。チケットがなくて入れなかった2016年ドリアングレイの千秋楽。劇場側のはからいで、公演を全てモニターで流してくれた。小さなモニターを必死に双眼鏡で眺めるオタクたち。そこに国境はない。
退勤道
公演を終えた俳優さんが、帰り際にファンとの交流を持つ場所、それが退勤道。
軽く挨拶するだけの俳優さんもいれば、ファンの質問に答えたり、一人ひとりと握手しながら言葉を交わす俳優さん、サインや2ショット写真に応じる俳優さんもいらっしゃいます。
韓国芸能界は芸能人とファンとの距離が近いことが有名ですが、舞台俳優はそれがさらに顕著。退勤道は、主にファンカフェといわれる私設ファンクラブが中心になって運営されており、その日の俳優さんの予定によって、開催の可否やルールが事前に通知されます*3。これに従わないと、いわゆる「ヤラカシ」になるので注意。
退勤道に参加するファンは、カテコ終了と同時に福男さながらのダッシュをかまします。早く現場に到着した者から、良いポジションを確保できるからです。まさに弱肉強食。
チョ・スンウ先輩の退勤道に出くわした私の妹は、ヌーの大移動に遭遇したような恐怖を感じたと言ってました。
最近はコロナ感染防止のため、退勤道もほとんど実施されていないようです。今後、この風物詩も無くなるのだろうなと思うとちょっと寂しい気もしますが、安全第一ですもんね。
以上、韓国ミュージカルの小ネタ集でした。お付き合いいただきありがとうございました。
また思いついたら書き足していきます!