衝動と情熱だけで生きている

主に観劇の記録。

2年半ぶりの観劇@韓国~デスノート編

思い起こせば2019年2月末、韓国最後の観劇は、今は無きLGアートホールでのJCSコンサート。
あれから2年半。ついに戻ってまいりました!
芸術の殿堂!!!

泣いた。

観劇1作目は、アンコール公演のおかげで奇跡的に間に合ったデスノート3演。
2年半ぶりの一発目なのに、ホングァンホ砲を浴びて生きていられるのかという一抹の不安と共に入場。

今回はキャスト違いで2回観ることができました。血ケッティングはコロナ前より激戦。血みどろになりながら辿り着いた先は天国か地獄か。

2022年バージョン(3演)について

今回はODカンパニーによるノンレプリカ公演ということで、前回までと何が違うのかと思っていたのですが、ストーリーや曲に変更は無し。歌詞も多分同じだったと思います。
変わっていたのは一部の編曲位。特に大きく変わっていたのが、ミサミサの代表曲”I'm Ready"。ポップなロック調だったのが、マイナーで大人っぽい曲調に。ダンスもそれに合わせて変わってました。最近のK-POPの流れに合わせたのかなと。

大きく変わったのは演出面。
プロジェクションマッピングを使った舞台演出、って聞いてたので、東京駅とかシンデレラ城(ディズニーランド)のあの感じを思い浮かべてたんですが、全然違った。
技術的なことはよくわからないけど、外側から投影されてるんじゃなくて、舞台全体にLEDパネルみたいなのが敷き詰めてあって、それに映像が映し出されているんです。
大道具は無くて、存在する舞台装置は家具くらい。前回までもシンプルな舞台だったけど、今回は映像以外ほぼ何もない状態。バミリもほぼなかったので、俳優さん大変じゃないのかな。
で、映像が展開することで場面転換していくんですが、暗転なしでアニメーションのように舞台が切り替わっていくので、観てる観客としては全く気持ちが途切れないんです。どんどん舞台に引き込まれていく感じ。
月の部屋・Lの部屋・警察という3か所がコマ割りのように表現でされていて、まるで漫画を読んでいるような感覚を味わえたり、テニスシーンでは横視点・俯瞰・お互いからの視点と次々切り替わる視点のおかげで、ものすごい臨場感を味わえたり(切り替わる映像に合わせて動く俳優陣もすごい)、死神の世界が映画のような異世界だったり。
舞台と漫画とアニメの融合という感じで、全く新しい世界を見た気持ちになりました。今まで見たデスノの中で、個人的には作品として一番満足感が高かったです。

3演ハイライト動画


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光の演出もすごくカッコよくて、開幕前にあの印象的な殿堂の天井が、赤いライトで照らされてるんです。まるで今にも天上からデスノートが降ってきそうな雰囲気。
あと、1幕と2幕の開幕時、時計の秒針音に合わせて会場の明かりが1段階ずつ暗くなっていくんですが、これも舞台への没入感が高まってすごくよかった。

赤く染まった天井。舞台は撮影不可なので天井だけ。

あえて文句をつけるなら、新宿の電光掲示板。トンチキ日本語どうにかならなかったのか。日本語わかる人にちょっと見てもらえばいいのに・・・(韓国あるある)

衝撃の「雪ノだミルダ牛肉」(白い〇印内)。他もなかなか怪しい。

では、ようやく各回の感想に参ります。

7/15(金)ソワレ

夜神 月:ホン・グァンホ
L:キム・ソンチョル
レム:キム・ソニョン
リューク:ソ・ギョンス
弥 海砂:ケイ

人が多すぎて横からサッと撮ったので、誰かのチケット映り込んでですみません。

御年40歳の高校生グァンホ月vs30歳なのに高校生に見えるソンチョルL。
グァンホさんの第一声を聴いた時、韓国でミュージカル観てるんだ!という実感が突然こみ上げて、鳥肌が立ち涙がこぼれました。
でも、あれ?なんか歌声がスマートになってないかい?
地獄の底から湧き上がるマグマ感がないというか、そよ風のような心地よさ*1すら感じる軽やかさ。前回グァンホさん観たのがジキハイだったからそう感じたのか、歌い上げる部分であえて力をふっと抜いている感じ。
確かにドスが効きまくっていた初演より今回のほうが高校生っぽいし*2、舞台全体のバランスを考えてのことなのかも。
グァンホ月は、リュークミサミサも全部自分の手駒なんだよな。正義面した極悪非道人。世界を変えるというより、最初から自分が世界を操るためにデスノートを使っている感じ。*3
で、グァンホ月のそよ風レベル(本人比。相対比では800hpaの猛烈な台風)のイッタッミョーーーーン゛ン゛ン゛ッッッッッッ!!!!!を聴き、2年半ぶりの音圧に酔いしれていたのですが、この日最も私が惹かれたのは、ソンチョルLでした。

初演版イッタミョン(デスノート


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様々なドラマでの怪演ぶりが気になっていたソンチョル氏。主役じゃないのに常に作品に爪痕を残す俳優さんだなと思ってたんですが、舞台で拝見するのは初めて。
思いがけず響きの良い低音ボイス。常に無表情で、何を考えているかわからない半開きの目。緩慢な動きから発する異様な存在感。日本の映画版デスノート松山ケンイチLに近い。
指先だけで物をつまんで持ち上げたり、猫背で突然にゅっと人の前に現れたり、じっと座ってるのに足の指先が常に動いてたり、紅茶の甘さに納得できず何個も角砂糖を投入した後に満足そうに微笑んだり、摘まみ上げたイチゴのヘタをむしってヘタだけ食べたり、ブラウニーやチュッパチャップスで一人ジェンガしたり。挙げたらキリがないくらい細かい仕草をたくさん仕込んでいて、Lの特異性が際立ち、原作を彷彿とさせる演技でした。

独自のLを作り上げたジュンスに対して、原作に忠実なソンチョルLは逆に新鮮。
インタビューで「ジュンスとWキャストを演じるにあたり、どんなLにしたいか?」と聞かれていたソンチョル氏が「原作に忠実に演じたい」と話していたのを後になって知ったんですが、その通りだな!有言実行すごいな!!って褒めたたえたい。
舞台上でグァンホさんと対等に張り合ってるのもすごいけど、演技は今回みたキャストの中でダントツに良かったです。特にラストシーン。月がキラだと知らされたときに見せた、諦めと虚しさと、真実を知った喜びのようなものが入り混ざった表情。その感情を一瞬の顔と仕草で観客に伝えるの、すごくない?
別作品でもぜひ観てみたいです。

ソンチョルLに文字数を割きすぎてしまいましたが、ソニョンレムもすごくよかったです。ソニョンさんのあの独特の波打つような歌声が、現実感のない死神役にマッチしていて、扮装なくても歌声だけで十分演れるんじゃないかと思います。
初演のヘナさんを超えるレムはいないと思ってたけど、ソニョンレムとどっちが好き?って聞かれると、歌声的にはソニョンさんのほうが役に合っているかも。母性はヘナさんが優るけど。

ギョンスリュークは表情も身のこなしもスマートで、ホンソクリュークを見慣れているとアクが弱くて人間ぽい。死神役だけに、メイクがなければトートって言ってもいいくらい。でもそんな人間ぽいリュークだからこそ、月とも友情を築いたように見えて、ラストシーンが更に残酷に感じました。
ギョンスさんとホンソクさん、デスノ延長公演とキンキーブーツかけもちなんですよね。超ハードスケジュール。どっちもメイク大変そうだし、体力とお肌が持ちますように。

ミサミサ役のケイちゃんは、さすがアイドル。今まで見たミサミサの中で一番役にハマってると感じました。実力者ぞろいの共演者に混じっても遜色ない歌声だったし、熱狂的に月を崇拝する危うさと純粋さを、とても上手に表現しているなと思いました。

 

7/17(日)マチネ

夜神 月:コ・ウンソン
L:キム・ジュンス
レム:キム・ソニョン
リューク:ソ・ギョンス
弥 海砂:チャン・ミンジェ

今回はちゃんと並んで撮りました。

初めましてのウンソンさんに、お馴染みシャLの組み合わせ。死神たちは前回と同じで、ミサミサビートルジュースで韓国ミュージカルアワード新人賞を受賞したチャンミンジェさん。

で、全く予備知識なくウンソン月を観たんですが、めっっっっっっっっっちゃくちゃ歌上手いね!?!?!?!?!?こういう人って第一声でわかる。話すように歌いだした一声目で、あ、この人好きだと思った。声の質としてはグァンホさんに近い。若グァンホ。演技も年相応の月という感じで、若さゆえの暴走感をうまく演じていたと思います。
ラストシーンは俳優さんによって結構違っていて、グァンホ月は最後までリュークにやめろ!って命じてたけど、ウンソン月は意地もプライドもなく、やめて~殺さないで~って必死に泣いてすがってた。最後の最後で仮面が剥がれて一人の青年に戻った感じ。こういう解釈違いが楽しめるのもWキャストならでは。贅沢。

そしてそして、シャLですよ。ジュンスが作り上げてきた数ある役の中でも、最もその地位を確立して認められている役。ジュンスのことをよく思っていない一部韓ミュファンでも、シャLだけは別だって言ってる人もいるくらい。
今期のシャLはこれまでに増して激しい。常に脳みそフル回転していそうな鋭利な目つきで、感情の起伏が凄い。原作のLとは全く違う、でもめちゃくちゃ引き込まれる、激情型のシャL。あの独特なしゃがれ声も、掴みどころのないシャLのキャラにぴったりだし、ロックなデスノの音楽と相まってめちゃくちゃかっこいい。
シャLを観るとソンチョルL観たくなり、ソンチョルL観るとシャLが観たくなる、終わりがないループ。そりゃチケット取れんわ。
そして、圧巻の舞台掌握力。どこにいても自然と目で追ってしまうし、シャLが出てきた瞬間、客席を含めた舞台全体の空気がギュッと張り詰めるのを感じる。2幕の体感10分位。こんな俳優なかなかいない。M!やエッカルは配信で観ることができたけど、この空気を味わえるのは生舞台だけ。早く世界中の舞台好きに観てほしい!

ミンジェちゃんのミサミサも安定感あって良かったです。ケイミサより賢そうで、自分の考えをちゃんと持っていそうなミサミサ

ソニョンレムの異次元感も、ギョンスリュークのコール&レスポンスも絶好調で、客席の盛り上がりもすごかったです。

作品自体にはそんなに思い入れがなかったのですが、キャストと演出の妙で、ものすごく満足度の高い観劇になりました。観られたことに感謝。

劇場内の様子

出演者のファンに加えて、原作ファンもたくさん来てた。(男子同士で漫画では~だったよね?って話している人が多かった。)私が今まで行った作品では一番客層が若かったのでは。韓ミュによくいる家族連れがほとんどいなかったです。

みんなキャスボと自分を撮りたがるから、キャスボ前は大行列になってました

殿堂お馴染みの吹き抜けの垂幕と、フォトスペース
人柱シリーズ;L バージョン
人柱シリーズ;月バージョン

番外編;芸術の殿堂前のイェンナルカルグクス。海鮮出汁が泣くほど旨い。

次回は今回観劇したもう一作品、笑う男について書きます!

*1:ただし3階席でも十分に波動を感じる程度のそよ風

*2:初演のグァンホ月はほぼハイドであった

*3:再演のチサン月は、デスノートを手にした時から後半にかけての感情の変化が繊細に表現されていてとてもよかった。