観劇オタクの皆さん、生きてますか?
観劇が自分の日々をどれだけ支えてくれていたのか、労働への意欲を沸かせてくれていたのか。推しの皆さんの輝きが、私にとって人生の道しるべなんだと痛感する日々。
でも、こんな時だからこそ、私の輝く星の一人について、じっくりと語らせていただけますでしょうか。これまでの感謝の意味も込めて。
彼と私との出会いは、彼がまだアイドル全盛期の時。
歌うために生まれてきた人だ、と思いました。
日本のテレビでも見ない日はないくらいの絶頂期から一転、意図的に世界から消し去られ、消息すら分からない状況に陥っていたとき。
彼に再び歌う場所を与えてくれたのが、ミュージカルでした。
音楽に愛され、音楽に囚われ、それゆえ孤独だった天才音楽家の人生が、当時の彼の姿とぴったり重なって、彼を表舞台に呼び戻してくれた「ミュージカル」という存在に、心から感謝しました。
そんなわけで私の怒涛の韓ミュ人生の幕が切って落とされたのです。
最初はね、「彼を観たい」という動機だけだったんですよ。
だって、メディアには一切出られないし、当時はコンサートもできなかった。
彼に会うためには、韓国までミュージカル観に行くしかないんです。
「言葉もわからないのにミュージカル観て楽しいの?」ってよく聞かれてたけど、これがめっちゃ楽しかった。むしろ言葉が分からなくても、音楽だと伝わるから。
そんなこんなで回数重ねてるうちに、作品が好きになり、作曲家や演出家が好きになり、共演者が好きになり、共演者の共演者が好きになり、そのまた共演者が好きになり*1、沼が深く広く拡大していった結果、気が付けば今に至ります(雑)。
今、彼のファンですか?って聞かれたら、そりゃもちろん好きだけど、彼を観るためにっていう動機だけでは動かない。正直、兵役前までで一通りやり切った感があって。遠くで見守ってる家族みたいな、そんなスタンスに落ち着いています(その辺の話はまた機会があれば)。
なので、今は彼のことを一人のアーティストとして、客観的に観られるようになりました。
「好き!!」って気持ちが強いと、どうしても冷静に観られないんですよね。先入観ありまくりだから、演技がどうとか、歌がどうとか、作品がどうとか、言える状況にならない。好きな人しか見えないから、 全体感が掴めないんです。
彼が兵役で舞台を離れた2年弱の間、本当にたくさんの舞台を観ました。ミュージカルだけでなく、ストプレやバレエや歌舞伎まで、ジャンルや言語を問わず、とにかくたくさん。
この2年弱で、私の「観客力」、めっちゃ上がったと思う。
演技の巧拙や俳優が作る空気感の違いが分かってきたり、各劇場の音響やオケの巧拙が気になってきたり、座席ごとの見やすさの差がインプットされてきたり、チケッティング能力が上がったり。
後半のはおいといて、とにかく舞台を観る力が格段についたのを実感したんですよ。
そんなレベルアップしたオタクが、客観的かつ冷静に彼を観られるようになった状態で、数年ぶりに彼の舞台を観たわけです。
2019年冬、ソウルのブルースクエアにて。大好きな「エリザベート」。
びっくりした。
びっくりした(リプライズ)。
え。なにこれ。
私ね、エリザベート大好きなんです。
彼のおかげで韓国初演から何度も観てるってのもあるけど、とにかく曲が大好きで、東宝版も宝塚版もウィーン版も、いろんなキャストで観てきた。
もちろん、彼が出てる回を一番観てる。はずなんだけど、
初めて観たような衝撃。
私、今まで何を感じながら、これ観てたんだろう?
彼が登場した途端、一瞬で変わる舞台の空気。
頭のてっぺんからつま先まで張り詰めた緊張感。
目線、表情、歩くリズム、そして魂を削るような歌と演技。
スパルタ観劇のおかげでたくさんの凄い俳優さんに出会えたけど、こんな人は初めてだ。
ジュンスと共演した俳優さんがよく「ジュンスは毎回、明日がないみたいに(すごい熱量で)演技する」って話すんですけどね。
ジュンス自身も「今日僕の舞台に来てくれた人はこれが最初で最後の一回かもしれない、その人のためにも毎回全力で演じる」的なことをよく話すんですけど、それってこういうことだったのかと。
とにかく、こんなに毎回全身全霊で演じる俳優、他にいないです。まさに、魂削ってる。
これはジュンスの並外れた体力のおかげもあると思うけど*2
仕事としてではなく、心から音楽を、ミュージカルを愛してて、舞台に感謝しながら演じてる。
一度その場所を失ったからこそ、今こうして歌うことができる奇跡を感じてる。
ジュンスにとっては舞台で歌うこと=生きることなのだと思います。
ジュンスの凄さはその後の「エクスカリバー」でも痛感しました。
あのどでかい会場*3の空気をここまで支配できる人、他にいる?
今絶賛上演中の「ドラキュラ」も然り。全身からほとばしる魂の叫び。赤く染めた髪の毛から流れ落ちる赤い汗がさながら血の涙のようで、400年という絶望的な孤独の闇が見えるようで、切なさで身が焦がれて瀕死状態になりました。
正直、歌とか演技とかで言えば、他にもっと上手な人はたくさんいる。
ジュンスの声は好き嫌いも分かれると思う。
ミュージカルデビュー10年経った今でも「アイドルでしょ」って色眼鏡で見てる人もたくさんいるし、現地のミュージカルファンは彼を煙たがってる人も多い。
でもね、観劇好きな人にこそ、ジュンスの舞台をぜひ一回観てみてほしい。
ミュージカルの枠にとらわれない、自由な役の解釈を体感してほしい。
生きる場所を与えてくれた舞台に感謝しながら、明日がないように演じる姿を実感してほしい。
観劇慣れしてる人だからこそ、何かしら感じるものが絶対にあるはず。
オタクレベルが上がった私が、再び彼の凄さに気づいたように。
話は変わりますが、ジュンスの舞台は観客側の緊張感もなかなかのもんです。
ジュンスと共に観劇スキルを上げてきた猛者たちは、観劇中微動だにしません。
双眼鏡の操作にも一切の無駄がない。
よく、アイドルが出る舞台は観劇慣れしてない人が多いからマナーが悪いって話を聞くけど、ジュンスの舞台については、ほぼ心配ご無用です。
というわけで、ジュンスのミュージカルデビュー作「モーツァルト!」が6月からソウルの世宗文化会館で開幕いたします。ジュンスのデビューと共に幕を開けて10周年となる今年、またシャチャルトに会える・・・!!
ウィルスなんかに負けてる場合じゃないです。一刻も早く世界が平穏になって、気軽にオタク生活ができる日常が戻りますよう。
「僕こそ音楽」、キム・ジュンス。
私をこの沼に引きずり込んでくれてありがとう。
これからも新しい世界を見せてください。