衝動と情熱だけで生きている

主に観劇の記録。

ジキハイと私

この冬韓国で一番の話題作と言われている「ジキルとハイド」。
何が話題って、そのキャストの豪華さに他ならない。
チョ・スンウ重要無形文化財
ホン・グァンホ(声が波動拳
パク・ウンテ(神)

の三俳優様によるトリプルキャスト!
主催自ら「最高のキャスティング」って言っちゃってるだけある。
その割に劇場のキャパが小さいので、血ケッティングもまれにみる熾烈さ。
血みどろになりながらもこの年末年始、何とか全キャスト観ることができたので、簡単に記録を残したいと思います。

ストーリーは簡単にご紹介するとこんな感じ。


え?なんで?ってつっこみ始めるとキリがない話ではありますが、ワイルドホーン御大の名曲と豪華俳優陣の歌唱力でなぜか最後にはものすごい満足感で満たされる作品。

見どころは一人の俳優による善(ジキル)と悪(ハイド)の演じ分け。
これができる俳優が存在してこそ成立する演目なので、韓国では、ジキハイはミュージカル俳優の一つの到達点だといわれております。

ついでに人物相関図置いときますね。登場人物少ないから覚えやすいです。(写真はお気に入りキャスト)

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 前置き長くなりましたが、ここからは5月までの主役3人についての感想を。

1.チョ・スンウ(チョジキル)

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韓国でジキハイといえばチョスンウ、チョスンウといえばジキハイ。
この人が演ってなかったらジキハイがここまでの人気にならなかったはず。
ドラマや映画でも数多く主演してて知名度抜群な実力派俳優さんなので、とにかくチケットが取れない*1。「しばらくミュージカルはやらない」って宣言してた後の復帰作なので、いつもより取れない。更に会場が狭いので輪をかけて取れない。会場に入るたびに「これがあの激戦を勝ち抜いた猛者たちか…」という眼差しで客席を眺めてしまう。
実力主義の韓国でこれだけの人気を誇るスンウ先輩、とにかく演技力がすごい。小道具の使い方とか、間の取り方、目線、背中を向けていてもひしひしと伝わってくる感情。
一人の人間の中には善と悪とが存在していて、それが常に葛藤しながら人格を作っているという、当たり前だけどとても難しい哲学的なテーマを、これほど体現できる俳優が他にいるでしょうか。しかも歌に乗せて表現するんですよ?チョジキルは喋ってたかと思うといつの間にか歌いだしている。台詞と歌がシームレス。「今から歌うぜ?」的な構えが一切ない。多分タモさんもチョジキル観たらミュージカル好きになってくれるはず。
ジキハイは有名な曲が多いけど、台詞も多くて演劇要素が強いので、歌だけじゃなくてかなりの演技力が問われると思うんです。余白が多いストーリだから、余計に主役の力量で出来不出来が変わるんじゃないかと。それを初演からずっと満員御礼で続けているスンウ先輩、本当にすごい。チョジキル=重要無形文化財
観る方も必死なので、特に”チグミスンガン”(This Is The Moment)に入る前の緊張感が半端ない。客席全員が姿勢を正して固唾を飲むのがわかる。多分ニコ動だったら「チョスンウのチグミスンガンキターーーーーーーー!!!!!」って一斉に書き込まれるやつ。ちなみにスンウ先輩は「チグム イスンガン」ってリエゾンさせないで歌うんですけど、ジキルの決意がすごく感じられて好きです。ほんとにこういう細かいところな。

あとは何といっても”Confrontation"。ジキルとハイドの対決を右半身と左半身で交互に演じ分ける、ジキハイのクライマックス。照明とともに一瞬で切り替わるジキル/ハイド、顔つきも歌声も存在感さえもガラッと変化。でも、別人ではない。一人の人間の人格の葛藤。3年前に初めて観たとき、え?は??ナニコレ??!!ナニコレスゲエ!!!!!ってものすごい混乱で打ちのめされて飲み込めないまま終わったんですけど、まあ今回も飲み込めないうちに終わってました。
Youtubeでも観れるし、映像でも十分すごいけど、生はその1億倍すごいので、全世界の人が生きているうちに1度は観た方がいいです。チケット取れないけどな。
あとスンウ先輩、引き出し多すぎて毎回ちょっとずつ演技違うらしいので、オタクにとっては完全に沼案件です。チケット取れないけどな。

2.ホン・グァンホ(ホンジキル)

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ホンジキル、ついに帰還。
ホンさんのジキル観たかったなあ、いつかまたやってくれないかなあと念仏のように唱えていたくらい、待ちに待ったホンジキル。すげーんだろうな、びっくりするんだろうな、って思いながら観に行ったら想像の1億倍凄くて死んだ。
ホンジキル(変身前)はオタクっぽくて若干キモめ。婚約式でエマと別れる時とかやたらデュフデュフ言っててめっちゃキモい。研究一筋の医学オタクって感じ。
もちろんキモくても歌は絶品で、呟くように歌ってるのにものすごい声量。チグミスンガン終わりのどこまでも伸びるロングトーンとか、気づいたら口開けて観てました。毎曲歌い終わるたびにショーストップ状態で、客席からすげーすげーって声が上がるのも仕方ない。
一転、ハイドに変身してからの狂った野獣感。世界一獰猛なゴリラ。エンパイアステートビルの頂上で暴れるやつ。(褒めてます)
生で彼の声を聴いたことがある方ならわかると思いますが、もうね、会場が声の波動で震えるんですよ。私は2階のほぼ一番後ろで観てたんですけど、”Alive”に入る時の雄叫びの波動でビリビリって電気が走って、全身総毛立ちしました。ホンさん、声で人殺せると思う。

ちなみにハイドが「自由ーーーーー!!」って叫ぶところ、オクエリの”私だけに”を思い出して「韓国2大ゴリラ…!」って思ってしまった(ものすごく褒めています)。
ハイドは変身後に毛皮羽織ってるんですけど、毛皮羽織った姿がまさに野獣。1幕終わりでロリコン司教様の頭を掴んで「偽善者!偽善者!偽善者!」って地面に叩きつけた後、アルコールぶっかけて焼き殺す(狂気)ところとか、完全に怒れるキングコング。しかも自分の胸を叩く仕草をよくやるので、そっちに寄せてるとしか思えない。

でもホンハイド、こんなに狂ってるのに、どこか悲しそう。ルーシーを射すときも静かに涙を流してて、愛してるのに受け入れてもらえないっていう絶望を感じました。
ミスサイゴンのトゥイもそんな役でしたよね。こういう報われない役がハマるのかも。ぜひまたオペラ座をお願いしたい!
ホンジキルは終演を待たずに3/10で先に上がってしまうので、まだ観ていない方には一日も早く蚕室に向かうことをお勧めします。そして全身に波動拳を浴びてボロボロになってください。チョジキルの次にチケット取れないけどな!

3.パク・ウンテ(ウンジキル)

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再び、ウンテ神が、狂気を見せる、時が、来たーーーー!
また出てくれると信じてました!!!ありがとう!
普段の穏やかさとか後光射してる感じからは想像できないけど、ウンテ神のハイドは彼にしか出せない狂った色気がもうたまらんのですよ。アンリ(フランケン)とはまた違う、完全に邪悪な存在。神が悪になるってどういうことよ?振り幅すごいな?
ウンジキル(変身前)は絵に描いたような育ちのいいイギリス紳士。立ち居振る舞いも美しく、婚約式でエマの元を立ち去るときも、いったん掃けようとしてから「ちょっと待って」ってエマのところに戻ってからの手の甲にキスですよ。ホンジキルがデュフデュフ言いながらジョンに無理やり連れていかれるのと同じシーンですよ?素敵さ爆発。歌声も気高くて高貴さに溢れてる。多分全寮制の有名男子校出身。
そんな英国紳士の中に、あんなに極悪エロ野郎が隠れているなんて…(わなわなしながらも萌え)。
変身した途端、ボタンを飛ばしながらシャツの前を開け放つウンハイド。カプチャギッ!あの逞しい胸板がッ!目の前にッッ!!!これ、3年前は途中まで開ける程度だった気がするんですけど、違いましたっけ?雄叫び上げながらシャツ破って胸板出すなんてウンテさんにしかできない所業。(今後ミンハイドには期待大。)推しの突然の変身で、心と体の反応がおかしくなってしまって、自分でも気づかぬうちに大量の涙を流してた私。1幕終わりにニットの胸元が濡れててびっくりしました。
ウンハイドは一転、ドスが効いた低い恐ろしい声で偽善者達を追い詰めながら抹殺していく。目がいっちゃっててめっちゃ怖い。普段優しい人って切れたら怖いよね。まさにあれ。
しかも怖いのにすごい色気。ステッキ(凶器)を持つ指からフェロモンが溢れておる。”Dangerous Game"での手の動きと悪い顔とか絶対18禁でしょ?とにかくドSっぷりがすごい。雷鳴と同時にルーシーの部屋に現れたときの「ネ サラン ル~シ~↺」ってドスを効かせつつの猫なで声。たまらん。ウンハイド様、好きです…
1回の舞台で正反対の役柄観れるなんて、ジキハイってなんて贅沢な演目なんでしょう。でも演じる方にとっては辛いだろうな。アンリも相当なもんだけど、ジキハイもなかなかの重さですよね。大変だけど5月まで続投してくれることを期待してます!

以上、3ジキルのご紹介&感想でした。今回もとりとめのない内容で失礼しました。
それにしても、エリザの時も書いたけど、こんなに難しい役をトリプルキャスト(3月から+2キャスト)で回せる韓国ミュージカル界の層の厚さ、本当にすごいですね?

3月からは本陣様が合流するので、命続く限り蚕室に通う覚悟で仕事と体調管理に努めたいと思います。

 

*1:3大激戦血ケッティング;チョスンウ、パクヒョシン、キムジュンス(私調べ)