衝動と情熱だけで生きている

主に観劇の記録。

韓国観劇日記(2022年9月)

7月に続き、9月に今年2回目の韓国行ってまいりました。
ノービザのおかげで7月と比べて観光客がかなり増えていて、かなり活気を取り戻した感があったソウル。明洞のコスメショップも少しずつ息を吹き返していて、ちょっと涙が出そうになりました。
入国時PCR検査廃止で、一気にコロナ前の勢い取り戻しそうですね。

明洞のバニラコも復活。露店も出ていて人通りもかなり増えていた。

今回観た作品について覚書を残しておきたいと思います。

9/16(金)ソワレ:スリルミー

・私;チェ・ジェウン
・彼;ファンフィ

スケジュール的にこの日しか見られなかったので、キャスト気にせずに観に行ったのですが、いやあ、よかった。
二人とも初見の俳優さんだったのですが、私のスリルミー史上の中で、最もまともに愛し合っていた二人でした。
特にジェウン私の、まっすぐにひたむきな愛は、狂いがちな私がスタンダード*1なスリルミー界において、逆に大変新鮮でした。
冒頭、仮釈放の協議会で「我々は真実を知りたいのです」と問われ、「真実・・・?」と呟いた後、一筋の涙を流すジェウン私。彼を見つめる目が、いつもどこか寂しそう。自分だけ見てほしい、無茶なことはしないでほしい、どうやったら彼を止めることができるのか。そんな逡巡が感じられる目線。
彼が投げ捨てたタバコをそっと拾って、大切そうにケースにしまう仕草。(初演ヒョンジン私は、それを踏みにじって、凶悪な笑顔を浮かべていた。)彼が立ち去った後、台詞に入る余韻。全ての瞬間に彼への深い愛情が感じられて、初めて私という役に感情移入することができました。
ファンフィさんがインタビューで「ジェウン私がキャストの中で一番愛情深い」と話していたのを後日読んだのですが、大変わかりみが深い。
そして歌も上手くて感情の乗せ方も自然。同姓同名のチェジェウンさん同様、スリルミ史上に残る俳優さんになることを期待します。

そしてファンフィ彼。見た目からして完全にモテ男なんだけど、大人ぶってるクソガキ感がとてもよかった。愛情に飢えて育ち、私の愛情に甘えているただの子供。いつも私を試すように話すんだけど、それが愛情からくるものだなってのが分かる甘さがある。
放火シーンでは、放火そのものへの満足感というより、ジェウン私が自分のためによくやってくれたっていう満足感を感じたし、とにかくめたくそ甘々だった。私に触れる指先から愛情が漏れてた。冷酷じゃない彼ってのもいいもんですね。しかもキスが壁ドンだったんですけどね。声出そうになりましたよね。
ちなみにその後のスリルミーでの私→彼のキスも壁ドンだったんですよ。劇場中央の柱でね。その柱、そういう使い道だった?ってね。舞台セット考えた人を抱きしめてあげたい気持ちになりました。

とにかく、お互いに愛し合っていたのに、方向性を間違えてしまって、引き返せなくなった二人。「わざとだよ」って言った後、涙を流しながら彼に歩み寄るジェウン私と、そんな私を絶望的な泣き顔で見つめるファンフィ彼。私は、ようやく彼を手に入れたけど、同時に永遠に失ってしまったんだな、って、"99年"を聴きながら、すごく切ない気持ちになりました。
幸せになれる道もあったんじゃないかな、と思わせる二人のスリルミー。とてもよかったです。もっかい観たい。

 

9/17(土)マチネ:キンキーブーツ

・チャーリー;キム・ホヨン
・ローラ;チェ・ジェリム
・ローレン;キム・ファンヒ

昨日のスリルミーと同じ忠武アートホールの上の階でやってるキンキーブーツ。スリルミーは地下でやってるので、まさに天国と地獄って感じ。
ついにきたよ!ずっと観たかったジェリムローラを拝める日が!!
チャーリー役は本来INFINITEのソンギュさんだったんだけど、怪我で急遽降板。でもホヨンさんなら間違いない。
観てる間中、ずっと、めちゃくちゃ、楽しかった。
まず開演前にドンが電話しながら出てくるんだけど、「オンマ、電話は鳴らしちゃダメだよ!」とか「前のめりで見ちゃダメだよ!」とか「マスク外すなよ!」とか、故郷のお母さんに電話してる設定で注意事項を説明するんですよ。みんな大笑いしながらそれを見てるから、会場全体に観劇マナーが徹底されるの。素晴らしいと思った。

ジェリムローラ、とにかく圧巻。"ローラの世界"で登場した瞬間から会場中拍手喝采。圧倒的な声量と緩急自在の歌声、そして泣く子も黙るスタイルと筋肉。ローレンのほっぺを可愛い可愛いってつんつんしたり、エンジェルちゃんたちとキャッキャ騒いだり、とろけるような低音ボイスで囁いたり、とにかくジェリムローラの一挙手一投足に会場が沸くのなんの。みんながローラに夢中。
そのパワーに圧倒されながらも、お父さんとの関係に悩み、あるべき自分を探し悩む姿には、手を差し伸べてあげたくなるような繊細さもあって、振り幅がすごい俳優さんだなあと改めて感心しました。
ホヨンチャーリーは、なんとなく日本の小池チャーリーを思い出させる歌声で、力強いジェリムローラとは対照的。さすがベテラン同士、バランスがいい組み合わせでした。
ファンヒローレン、お茶目で可愛く歌も上手い。オンニ~ってローラのことを慕ってる姿が愛おしくて、それだけで舞台上では描かれないローラとの友情が伝わってくるのが素敵だなと思いました。
そしてエンジェルちゃんたちね。最高。開幕前からインスタで扮装前のゴツイ俳優さんたちを見てたので、どう変わるのか楽しみにしてたんですが、みんなめっちゃ可愛い。特にラウンドガールには会場中からものすごい歓声が上がってました。なんでみんなピンヒールで飛んだり跳ねたりできるの?ファティマ(©FFS)なの?
そして、とにかく楽しかったのがカーテンコール。開演前からお客さんがみんな光る指輪みたいなのつけてて不思議に思ってたら、公式グッズでした。カテコ始まった瞬間、みんな指輪のスイッチ入れ、3階席まで全員立って、ヒューヒュー言いながら踊りまくる。日本の声出し禁止観劇に慣れてると、時代が違うのかと錯覚するほど。もちろんマスク越しだけど。日頃のモヤモヤとか来月のカードの引き落とし額とか飛行機飛ぶのかな(台風)って心配とか、全てを何とかなるさ!と思わせてくれるハッピーオーラ。

昨日の切ない帰路から一転、同じ会場をスキップで後にした私でした。思い出すだけで元気でるよ。ありがとう。

 

9/17(土)ソワレ:エリザベート

エリザベート;イ・ジヘ
・トート;キム・ジュンス
・ルキーニ;カン・テウル
・フランツ;キル・ビョンミン
・ゾフィ;ジュア
・ルドルフ;ジン・テファ

今回の観劇というか、この秋のメインイベント、エリザベート
私を韓国ミュージカル沼に叩き落したきっかけであり、初演から見続けてきた作品。しかもついにジヘさんがエリザベートを演じるのですよ。ジキハイのエマで、ドラキュラのルーシーで、誰だあの俳優と思わせたウリジヘペウニムが、グランドミュージカル界のトップオブトップのタイトルロールを!デビュー前から追ってたアイドルが売れたときって、こういう気持ちになるのかな。
10周年の今回、観られなかったらブルースクエアの怪人に転職しようと思ってた。何とか観られて感無量です。

さて、本日はジュンス以外はほとんど初参加のキャスト。他作品ではおなじみだけど、どんなケミになるのかなと楽しみにしてました。

ジヘエリ、やはり、歌が上手い。他作品では可愛らしい役が多く、声楽出身らしい裏声を使ったソプラノが印象的だけど、オクエリ先輩の影響か、地声で歌い上げる強シシィ。どの曲でも全くぶれない歌声で、満足度高い。少女時代は無邪気な可愛らしさで無双だし、容姿も華やかで見た目の満足感も高い。
なのに何だろう、決定的な何かが足りない感じ。ジヘエリならではの役作りというか、主役として観客を惹きつける魅力というか、うまく言えないけど、良くも悪くも癖がなさ過ぎて、印象に残らない。エリザベートの強さばかりが押し出されて、弱さや葛藤がうまく伝わってこなかったのが残念。
ジヘさんは可愛い容姿に鋭い棘を隠した俳優さんだと思うので、それが開花したら絶対にもっともっと魅力的になるはず。こなれてきた後半は、また変わってるかもしれない。好きな俳優さんだけに、今後に期待します。

そして、シャトート。久しぶりに観たけどやっぱり凄いですわ。
今回はマニキュアもなく、メイクも控えめ。でも登場しただけで会場の空気が変わる。前に、野島直人さんが、舞台で歌声に吐息を混ぜる難しさを話していらしたのですが、その吐息で会場の体感温度をどんどん下げていくシャトート閣下。あ、死が近づいてきた、ってのを、あれで観客に伝えるの、すごいですわ。シャウトしながら華麗に踊り、宙を舞う閣下。結婚式のワイヤーアクションだって、ロープはもちろん片手持ちですわ。しかもロープの揺れ幅自分で大きくしてますわ。足で勢い付けてたもん。
そして豹のように音もなくターゲットに近づき、仕留めた後、恍惚の表情を浮かべるシャトート閣下。マイヤーリンクはまじで鳥肌たった。なのに、最後のダンスでは床を踏みしめる生音が、3階席まで聞こえるんですよ。緩急凄まじい。
何度も観てるのに、毎回ハッとさせられる瞬間があるのは、シャ閣下も10年の間に進化されているということでしょう。
ネタバレになるので多くは書かないけど、これから観る機会がある方は、各シーンでのシャトートの登場の仕方にぜひ注目してほしいです。特にルドルフに忍び寄るシーンね。長くなりそうなのでこの辺で。

テウルさんのルキーニは、声質的にも絶対ハマるだろうなってわかってた。高音シャウトが気持ちいい!客席煽りも上手だし、ストーリーに出入りする狂言回しとしての立ち回りもとてもスムーズ。よかったです。

テファさん、めちゃくちゃ歌上手くなった!真面目で神経質そうなルドルフ青年。シャトートとの闇広の相性も抜群。ドリアングレイでこの二人のシーン観たとき、マイヤーリンクみたいな動線だなって思ったのですが、それが2022年に実現するとは。

しかし、何といってもこの回のメインはビョンミンフランツですね。プロローグの第一声から存在感抜群。マイクの音量下げた方がいいんでは?って思うくらい。実年齢からすると適役はルドルフなんだけど、無理無理。声がマエストロだもん。
ビョンミンフランツとジヘエリの声の相性が最高に良くて、ボートが私史上最高に泣けた。ぜひいつかジヘクリスとファントムやってください。

色々思うところはありつつも、韓国ならではのエネルギーに満ちたエリザベートでした。盆大好き。

 

9/18(日)マチネ:エリザベート

エリザベート;オク・ジュヒョン
・トート;シン・ソンロク
・ルキーニ;パク・ウンテ
・フランツ;ミン・ヨンギ
・ゾフィ;ジュア
・ルドルフ;イ・ソクジュン

キャスボ見ただけで泣きそうになりました。10年待ち焦がれたウンキーニ!!
ちなみに10周年の今期はいつものキャスボに加えて、この白いキャスボが地下2階のロビーに設置してあります。特別感あって良き。

今回は開幕前から色々ゴシップ出ててどうなるかなと思ってたけど、オクエリ健在でした。ソウルから台風逸れたの、たぶんオクエリのおかげだわ。
歌声はもちろんだけど、年を重ねるごとに、後半にかけての凄みが増してると思う。精神病院とかコルフ島とかでの孤独や葛藤が重みのある歌声に乗せて伝わってきて、歌だけで引っ張る俳優じゃ10年も演れてないはずって改めて思いました。やっぱり凄い。もうスンウ先輩のジキハイと一緒に重要無形文化財にしてください。

ソンロクトート。昨日観たシャトートと対極的。重厚な歌声に重厚な動き。そして決して踊らない。動きが重いと逆に非現実的な感じがして、これもまた死の表現として面白い。前回のソンロクトートもこんなに動かなかったっけ?
そしてソンロクトートは圧倒的にデカいので、同じ体格のオクエリを軽々とお姫様抱っこできるの。そしてめっちゃ足が長いから、動かないのに、ほんの数歩で上手から下手に移動できるの。この二人の”私が踊る時”は剛vs剛って感じのパワーゲーム。*2どっちも客席に風圧感じそうな迫力。これぞ韓国エリザ!!

そして、ウンキーニ。どの作品でもウンテさんの役の解釈にはびっくりするんですが、ルキーニもそう。本来狂言回しのはずのルキーニが、ウンキーニだとそうじゃない。本当は全てがルキーニの作り話なんじゃないか?トートってもしかしてルキーニの化身なんじゃないか?ってよくわからない妄想にまで発展してしまう。
決して前に出るわけじゃないのに、舞台の端で含み笑いをしていたり、意味ありげな顔で俯瞰していたり、客席に向かって優しく語りかけながら、俺はずっと観てるぞってジェスチャーをしてみたり。
エリザベートって全てのシーンがルキーニの振りから入るじゃないですか。その振りが、ただの振りじゃないんですよね。次に始まるシーンに意味を持たせる、含みのある振り。精神病院のウンキーニの前説が凄いってTwitterでも話題になってたけど、あれ全部アドリブなんですよね。「天才と狂人の差は?」ってやつ。これもネタバレになるので詳しくは書きませんが、エリザベートという作品を深く解釈しないとあんな台詞考えられないと思う。
歌声もビジュアルももちろん最高。ミルクで見せる悪い笑顔は初演から歳月を経てさらに磨きがかかってたし、力強い尖ったシャウトは、ウンテさんの他の役では見られない貴重な声。10周年記念にふさわしいカムバックキャスト、ありがとうございます!

フランツはミン・ヨンギさん。初演からのオクエリとの夫婦コンビは安定感抜群。ヨンギさんって役柄によって歌声変えられるのが凄いなあといつも思うんですが、フランツの時は正統派の声でとても心地良い。*3そこにいるだけで調和をもたらすヨンギフランツ、曲者揃いのキャストの中でとても貴重だと思います。

ソクジュンルドルフ。めちゃくちゃよかった。今まで見た韓国エリザの中で一番好きなルドルフだった。孤独で愛に飢えていて、自分の立場の重さに押しつぶされそうな不安定感。まさにシシィの鏡。シシィに見捨てられた時のルドルフの台詞と表情が、フランツに見捨てられた時のシシィの台詞と表情そのままで、胸に迫るものがあった。”僕はママの鏡だから”で、客席から聞こえるすすり泣き。演技が上手い。スリルミの彼やってた時と全く違う表情。他の役でも見てみたい。

ということで、最後は安定キャストで間違いない観劇での締めくくりでした。

 

今回は台風の影響で色々ありましたが、コロナ前とほとんど変わらない流れで韓国に行けるようになってきたので、これからもスケジュールが許す限り通い詰めたいと思います。その前に日本でキンキーブーツとエリザベート見られるので、比較しながら見るのも楽しみ。

 

*1:韓国だと最近ではキムヒョンジン私とか、イジュスン私とか。日本だと初演の成河私。万里生私もかなりなもんですよね。

*2:オクエリvsシャトートは剛vs柔

*3:M!の癖ありすぎ大司教様も大好きです。